第40話 安中さんの怖い話~赤い手中編~

「お婆ちゃんただいま!」

それはいつものように学校から帰ってきた日のことです。

「お帰りなさい美雪ちゃん。今日の学校はどうだったかしら?」

「えへへ~それがね~・・・え?」

それは椅子に座っているお婆ちゃんの後ろを通った時です。

安中さんにはお婆ちゃんの背中に薄っすらと真っ赤な手がそっと置かれているのが見えました。

不気味に思い、もう一度お婆ちゃんの背中を見ると、そこには何もありませんでした。

「どうしたの美雪ちゃん?」

「え?・・・う、ううん!なんでもないよ~。」

気のせいだろ、そう思ってその日はお婆ちゃんと過ごしました。

けれどその日から時々お婆ちゃんの背中にあの真っ赤な手がそっと置いてあるのが見えたそうです。

その頻度は時間が経てば経つほど多くなり、お婆ちゃんが退院してから半年経つ頃には毎日のように見えたそうです。

怖くなった安中さんはお婆ちゃんに聞いてみることにしました。

「ねぇお婆ちゃん。」

「どうしたんだい美雪ちゃん?そんな悲しそうな顔をして。」

「あのね、お婆ちゃんに変なことを聞きたいの。」

「変なこと?お婆ちゃんに何が聞きたいの?美雪ちゃん。」

「お婆ちゃんって、赤い手を持ってるの?」

「え?どういうことだい?それは・・・美雪ちゃんのお友達の間で流行っていることなのかな?お婆ちゃんにはわからないかな。」

真っ赤な手についてお婆ちゃんは何も知らない様子でした。

それから両親にも聞きましたが、不気味がるだけで答えを教えてくれませんでした。

それから何だかお婆ちゃんの背中を見るのが怖くなって、お婆ちゃんと話す機会が減っていきました。

「最近美雪はお義母さんと話すことが減りましたね~。」

「うふふ。いいんだよ。美雪ちゃんだってお年頃ですもの、そろそろ彼氏でも紹介してくれるんじゃないかしら?」

「まさか!美雪はまだまだ子供ですよ。」

「そうかしら?うふふ。」

そのやり取りを聞いたのを最後に、お婆ちゃんはまた入院してしまいました。

「お婆ちゃん・・・。」

「あら?美雪ちゃん、今日は来てくれたのね~。」

お婆ちゃんが入院してから毎日のようには通わないまでも、週に2、3回はお婆ちゃんに会いに通いました。

けれど、安中さんは通い辛かった。

なぜなら背中に見えていた真っ赤な手が胸のあたりにあり、薄っすらとしていたのが今ではハッキリとしていたからだそうです。

そのことを間接的にお婆ちゃんに聞いてもお婆ちゃんは何も知りませんでした。

ハッキリと真っ赤な手のことを言っても、お婆ちゃんには胸にある真っ赤な手が見えていませんでした。

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