第39話 安中さんの怖い話~赤い手前編~

「そうだったんですね。私、てっきり九重さんには嫌われていると思っていました。」

「ちょ、ちょっと!?何であたしがあんたを嫌うのよ!?」

「だっていつも私の誘いを断るじゃない。」

「それは・・・。」

柑奈さんは頬を赤く染め、そっぽを向く。

「柑奈、君のことはわりかし理解できるから知っているが、ここは自分の口で言いたまえ。」

「わ、わかったわよ!・・・その、恥ずかしかったのよ!あたしはあんたみたいに、その、社交的じゃないし、し、知らない人からの誘いは断るようにしてんだよ!悪かったな!」

「そうだったんだ!えへへ~良かったよ~。嫌われてなくて。」

「ふんっ!」

「さて、柑奈とのじゃれ合いはここまでにして。」

「おい!」

「話してくれないか安中君。君の抱える悩みを。」

笑顔が消え、安中さんは震える手をギュッと握って口を開く。

「実は・・・。」


中学生の頃から安中さんは優等生であることを心がけていました。

勉強も毎日のように予習復習をし、運動も毎日のようにジョギングしたり、苦手な競技は練習して、いつも先生に褒められていました。

でもその本質は、お婆ちゃんに褒められたいという子供のような願いからでした。

安中さんにとってお婆ちゃんは何でも知っている安中さんだけの先生であり、憧れの女性だったそうです。

そんなある日、お婆ちゃんが入院することになりました。

「ごめんね、美雪ちゃん。」

弱々しい笑顔が辛かったことを今でも覚えているそうです。

安中さんはお婆ちゃんが入院してから毎日のように病院に通いました。

「お婆ちゃん!」

「あら!美雪ちゃん、今日も来たのね。」

「うん!お婆ちゃん・・・今日は調子いいの?」

「あら?うふふ。美雪ちゃんを心配させるなんて悪いお婆ちゃんね~私は。」

「そんなことないもん!」

「うふふ。でも、そんな美雪ちゃんにお婆ちゃんから嬉しいお知らせよ。」

「え!?なになに!」

「実はお婆ちゃんね~今日の検査で問題が無いことがわかったの。だからあとちょっとだけ様子を見て入院して、元気だったら退院が明後日に出来るのよ~。」

「ほんとう!?」

「ええ。だから美雪ちゃんが病院に来るのも後数回ね~。」

「お婆ちゃん!」

思いっきりお婆ちゃんの胸に顔を埋めて甘える安中さん。

「あら?うふふ。美雪ちゃんは甘えん坊ね~。」

「いいんだもーん!だって美雪は、まだまだ子供だもーん!」

「まぁ!?うふふ。」

そんなやり取りの数日後、お婆ちゃんは無事に退院しました。

けれど、その日から安中さんに奇妙なものが見えるようになったのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る