第387話 食休みの話し~見たな? 前編~

「さぁ!次は優の番よ。」

「へ?」

「何気の抜けた声出してんのよ。あんたよ、あ・ん・た!」

いやいや・・・はい?

「私たちが話したんだ。当然優君も話すだろう?」

あ~そういう流れですか。

まぁ、まだまだネタはありますしね。

「いいですよ。では僕が話しますね。」

「優君の話しでお終いになるだろう。短い話で頼むよ。」

「締めに相応しいのでね。」

ハードルをあげるなぁ。

「ん~では、こんな話はどうですか?これは、ある男性の話し・・・。」


この業界に入って数年、仕事は順調そのもので不満や不平はなく、このまま何処かのいいひとと出会って、結婚して、子供を育てて、老後をゆっくり過ごすのだろう。

そう考えていた時に僕が遭遇した出来事です。

あれは、丁度担当していた番組が終わった時でした。

「Yちゃん、お疲れ。」

「お疲れ様です。」

「今日でこの番組も終わりだなぁ。寂しいかい?」

「そうですね。10年間も受け持った番組ですから思うところはありますよ。」

「だよなぁ。俺もそういうのあるし、んで他の仕事へと意識を切り替えって感じで・・・味気ねぇんだよなぁ。」

「そんなもんですよ。」

「そこでYちゃんに試練だ。」

「試練?今さら何を?」

「事故現場の撮影をしてもらいてぇのよ。Yちゃんにニュース番組から話があってねぇ。でもYちゃんってバラエティーばっかだったっしょ?だから試験的にね。Aちゃんに詳しいことは話してあっから確認してな。」

これまで深夜番組かバラエティー番組しか担当してこなかった僕にニュース番組から話がかかったのだ。

こんなチャンスを逃すわけもなく、僕はすぐさまAさんに話を聞きに行きました。

「初めまして。○○○○番組を担当しています。Aです。」

「Yです。お声がけしてくださりありがとうございます。」

「いえいえ。丁度引継ぎの後任を探していたもので。それでですね、早速お仕事の話をしてもいいですか?」

「はい、お願いします。」

これから担当する番組は夜の時間帯のニュース番組で、カメラを回すのがどうしても夜が多くなるという話だ。

また、事件現場を撮影するのだからルールなんかも覚えなければならない。

「特に重要なのは‟お祓いは自己責任”ということです。」

「お祓い・・・ですか?」

「ええ。こういう話はホラー番組だけと思われがちですが、我々も事故現場とかを撮影するのです。憑かれてしまったなんて話は少なくないんです。でもホラー番組みたいにお祓いに対してのお金はでません。なので、自己責任と。」

「な、なるほど。」

まさかニュース番組の話しで“お祓い”の言葉を聞くとは思いませんでした。

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