第386話 食休みの話し~踊る女 後編~
『それではね、早速行きましょうか。ね?』
『・・・。』
『えっと・・・ま、動画撮影初めてなんてこんなもんでしょ。気にせず行きましょう!』
動画は廃ホテルの中に入って行き、何処で踊ってもらうかを探しながら心霊探索する流れでした。
コメントではあることないことがつぶやかれ、皆いつも通りのたまたま聞こえた音や声が出るくらいと思っていたんです。
僕もそうでしたが、それよりも女性のことの方が気になっていました。
見覚えがあるのは事実なんです。
『ここなんてどうですかね?お風呂場なんて絶好のスポットでしょ?え?エロ目的?んなわけねぇーじゃん!僕はガチで幽霊に会いたいんだから。僕の童貞は綺麗な女幽霊さんに捧げるの!』
笑いを呼ぶやり取りを一通り行い、いざ実験開始。
女性をお風呂場の中央に立たせ、音楽機器で例の曲を流す。
男性が女性をカメラに映しているが、女性は踊る気配を見せない。
『・・・あの、踊ってくれる?でないと実験がね・・・。』
『・・・。』
男性が何度語り掛けても女性は無言のまま。
コメントでもどことなく変な空気になりつつある。
『はぁ~。あのさ、こんなことは言いたくないけど協力してくれるんだよね?もし無理ならさ、無理って言ってくれない?黙ってるだけじゃ僕だってどうしようもないんだけど?』
『・・・。』
「あ~もう!わかったわかった!そうですかそうですかはいはい。え~皆さん、申し訳ない!どうやらこの実験は出来そうにないです。いやだって踊らないんだもん。どうしようもないじゃん。は?僕が?だからこの実験は女が躍らないと意味ないって言ったじゃ・・・。」
男性は突然振り向き、女性をカメラに映しました。
するとこう言ったんです。
『なんだやればできるじゃん!そうそう踊ってくれればいいのよ。』
男性の目には女性が躍っているように見えたのでしょう。
けれど視聴者である俺らには女性が刃物を男性に向けているようにしか見えないのです。
「は?何これ?やらせ?え?どういうこと?」
コメントを見てもやはり踊っているように見えているのは男性だけのようでした。
『いいね!その調子で頼むよ!』
一歩、また一歩と女性が近づいているのに、全く気付いていない男性。
皆の視線が集まる中、突然生放送は終了しました。
「・・・は?なに?どういうこと?」
それ以降、その男性の生放送は再開されませんでした。
「これでおしまい。」
「何と言うか・・・言葉にできませんね。」
「言っただろう?不気味な話しだって。」
「確かに不気味ね。結果も何もわからないなんて。そもそもこれって心霊なの?」
「それすらわからない。わかるのはこの話だけ。」
背筋が凍り付くような・・・てかこんな話の後で心霊スポット行く勇気ありゅ?
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