第290話 式子さんの怖い話~跳ねる頭中編その1~
「ぷっは!うめぇ!!」
久々に飲む酒の味は、それは格別で、某アニメのように感動したのを覚えています。
「ハハハ。俺様に感謝しろよ?んでよ、昼間通ったあの交差点が例の場所か?」
「そうだよ。不気味だろ。なんか、嫌な感じだし。」
「ん~あんまわかんなかったけどな~。」
「とにかく!さっさと写真を撮ってくれよ。」
「いやいや。これを見てくれよ。」
「・・・は?」
スマホで撮るものとばかり思っていた僕の前に出したのは、ビデオカメラでした。
「これで動画を撮って、何か映ればテレビの応募よ!お・う・ぼ!」
「マジで言ってんのかよ。」
「マジもマジ。だって本当に映ったらテレビに出れるかもしんねぇじゃん!そしたら芸能人に会えるんだぞ!夢が広がるだろ?」
「いやどうでもいいし。てか、ここに引っ越してからテレビなんて見てねぇし。」
「っと、確かにテレビねぇな。ま、それはどうでもいいだろ。」
「おい。」
「さて、そろそろいい時間だし、行くか。」
正直、夜にあそこに行くのは嫌でした。
けれど、約束は約束。
僕は無い勇気を振り絞り、友人と共にあの交差点に行ったのです。
「う~ん。やっぱ夜は雰囲気あるなぁ。」
友人の言う通り、昼間とは比べ物にならないぐらいにおぞましい雰囲気を、交差点は醸し出していました。
特に、見ないようにしている電柱に供えられている花からは見られているような気もしました。
「とりあえず・・・録画ボタン良しと。」
恐怖で動けないでいた僕とは打って変わって友人はビデオカメラをいろんなところに回していました。
一時間ほどでしょうか。
友人が満足するまでそのぐらいの時間が経っていたと思います。
「ま、まだかよ。」
「う~ん・・・ダメだな。何も映らねぇ。」
「も、もう帰ろうぜ。」
「いやいや映んねぇと意味ねぇから。もう少しだけ・・・てか、お前はどうなんだよ。」
「ど、どうって?」
「どこか嫌な感じしねぇのかよ?俺よりもお前の方が分かるんだろ?」
「いや知らないし。でも、嫌な感じは、やっぱり電柱の花かな。」
「花ってこれか?どれどれ・・・映んねぇな。」
「お、俺は帰るぞ!」
「おいちょっと待てよ!」
友人の制止を振り切り、僕は家に全速力で帰りました。
後から追いかけてきた友人に謝り、次の日は朝から録画したものを見ました。
けれど、友人が望むようなものは何も映っていなかったのです。
「結局空振りか~。」
ホッとした時です。
交差点で感じたようなあの視線を、この部屋で感じたのは。
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