第236話 創兄さんの怖い話~不可解な音。中編その1~

「ヒャヒャヒャ。おめぇら仲が良いなぁ。」

「あ?爺さんなんか用か?」

「ヒョヒョ?なんじゃ年寄りを邪険そうに見るんじゃねぇよ。」

「不快にしたのなら申し訳ありません。失礼ですが酔っぱらっているようでしたので。」

「昼間から飲む酒こそ祭りの醍醐味よぉ!」

「んで?爺さんは俺たちに何か用なのかよ?」

変な爺さんだった。

酔っぱらっているにしては足取りもしっかりとしていたし、何より呂律ろれつがしっかりしているんだ。

それが妙に変な感じだったんだ。

「ヒャヒャヒャ。大したことじゃねぇよ。ただのじじぃの独り言をお前たちに聞かせてやろうかってな。」

「はぁ?」

「お前たちのようなわけぇ奴らの好きそうな話だ。」

地べたに座った爺さんは急に真剣な顔になって語り始めたんだよ。

「この近くの山のふもとには鬱蒼とした樹海のような森が広がってるんだが、その森の何処かにはかつての村跡地が存在する。」

「むらあとちぃ?」

「ああ。そこには既に村人などいないはずなんだが、何処からともなく音が聞こえてくる。そう、料理する音がな。」

「料理する音?」

「その音を聞き、そこに近づくと、誰もいないらしい。さらに不思議なことにその料理の音がした一軒家だけ、他と違い誰かに掃除されているような小綺麗さがあるのだ。いったいどうしてなんだろうな?もしかしたら人がまだ住んでるのかもな。それとも人ならざる者か・・・。」

「・・・。」

「どうだ?気になったか?」

「気にならねぇって言ったら嘘になるけどよ。それって作り話だろ?」

「きっとその森に入らないように。と、いう注意喚起の為に作られた話。」

「ヒャヒャヒャ。そうかもしんねぇな。」

「くだらない話だ。さして興味もでねぇな。」

「本当にそうか?」

「は?」

その一瞬だけ、爺さんが別の人物のように俺は見えたんだ。

「ヒョヒョ。何でもねぇよ!祭りを楽しめ糞ガキども!」

それだけ言い残して爺さんは何処かに行っちまった。

初めは俺たちも無視して祭りを楽しもうとしたんだが、どうにも気になってしまった。

「・・・なぁ。」

「言うなよ出島。」

「けどよぉ・・・。」

「出島さんの気持ちはすごいわかる。僕も気になってる。」

「だよな!」

「だが、そんな作り話を信じる根拠はないだろ。」

「それも・・・そうだけどよぉ・・・けどよぉ!」

「はぁ・・・わかった。爺さんの言っていた場所に行ってみよう。それで根拠のない作り話だということを証明してやる。」

「そうこなくっちゃ!流石は創!」

「調子に乗るな。で、場所は何処だ久利?」

「この近くってお爺さんは言った。ということは・・・あの見えている山の可能性ありかな。」

「あそこだな。」

「よーし!行こうぜ!」

俺たちは爺さんの作り話に付き合うことにしたんだ。

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