第389話 心霊スポット~とある廃病院その1~

山付近の場所から一本、本道を逸れる道に入るとそれは姿を見せる。

周りを木々に囲まれた白い建物はおごそかな雰囲気のある門に守られて僕たちを待ち受けていた。



「着いたでありマス!」

「こ、ここが心霊・・・スポット?」

なんか妙に綺麗な気が・・・

「この廃病院が式子の言っていた心霊スポットなの?なんか綺麗な気がするんだけど・・・。」

「僕もそう思うんですけど。」

「それはそうだろうな。ここは2年前までは運営していたんだから。」

へ?2年前?

「2年前なのに心霊スポットでありマスか?その、それは本当なんでありマスか?何と言えばいいかわからないでありマスが、心霊スポットとは思えないんでありマスが・・・。」

千夏さんの言いたいことはすごくわかる。

僕もここが本当に心霊スポットなのかどうか疑わしい気がするし、何より古めかしさ?っていうのかなそういうのが感じられないんだけど・・・。

「無理もないな。他の心霊スポットならば古くて、それらしい雰囲気を感じるものだが、この廃病院からは私でも感じない。だが、ここは心霊スポットで間違いはない。」

「何かの曰くつきってこと?」

「ああ。聞いた話では、ここの婦長さんが不可解な死を遂げているそうなんだ。」

「不可解な死、ですか?」

「ああ。歩きながら話そう。」

そう言った式子さんは何処で借りてきたのか鍵を取り出して門を開けてしまう。 

「さぁ、行こう。」

先導する式子さんの後を僕たちはついて行った。


「先程の話の続きだが、婦長さんの不可解な死について話そう。まず婦長さんの人物像だが、年齢は40代前半。温厚な性格で、患者からも人気があり、後輩や医者たちからの信頼も厚い人物だ。」

「要するに問題のない人物ってこと?」

「ああ。その婦長さんが2年前の10月に突然亡くなった。」

「病気ですか?それとも交通事故とか?」

「いいや。」

「ま、まさか殺しでありマスか!?」

「それだったら不可解な死などとは言わない。婦長さんはこの病院の病室で亡くなったんだ。」

「この病院で?自殺ってこと?」

「それも違う。婦長さんは患者用のベットの上で眠るように亡くなっていたんだ。何の外傷もなくね。」

外傷無しで病気でもない。

どういうことだろう?

「ふふっ。」

「ん?」

「優君のように当時の警察やこの病院の関係者は大いに悩んだ。自殺理由も無ければ外傷もない。医者が解剖したが、病気や毒といった内的要因でもない。婦長さんは突然眠るように亡くなったんだ。そうして、この病院が心霊スポットと呼ばれるきっかけになったかどうかは定かではないけどね。」

いつの間にか僕たちは病院の入り口前に立っていた。

そして・・・。

「さぁ中に入ろう。」

またしてもどこから式子さんは鍵を借りてきたの?と聞きたい僕だった。

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