第390話 心霊スポット~とある廃病院その2~

「さて、まずはここで不可解なことが起きるようになった。」

ここは・・・待合所だな。

「ここで何が起きたのよ。」

「‟物が無くなる”ことが起きるようになった。」

「物、でありマスか?それは傘とかバッグとかでありマショうか?」

「そう。ここで待っていると、持ち物が無くなる。ある者は雨の日に持ってきた傘を。またある者はお見舞いに持ってきた果物が、ね。」

泥棒だろうか?

「誰かが盗んだんじゃないの?お年寄りってそういうのに気づきにくいし。」

「いいや。誰も盗んでなんかいないんだ。だって物が無くなるのはいつも一人でいる人だけだからね。それに、盗んだ物の中には眼鏡なんかもある。盗む必要があるかい?」

「う~ん・・・流石に眼鏡を盗むのは変ですね。」

「だろ?それに警備員が見張っていたんだ。そう何度も見逃すとも思えない。」

「そうなってくると幽霊の仕業ってこと?」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。」

「ハッキリしないわね。」

「ま、実際に私がこの目で見たわけじゃないからね。次に行こう。」

式子さんについて行くと、この度は内科の診察室前で立ち止また。

「今度はここで不可解なことが起きた。」

「今度は何でありマスか?」

「また物が無くなったとか?」

「いいや。違うことが起きたんだよ柑奈。ここでは看護婦が体調不良を訴えるようになったんだ。」

体調不良?どういうことだろう・・・。

「体調不良って・・・は?急に?」

「そう。何の前触れもなく、急に看護婦が体調不良を訴え始めたんだ。それも、この診察室に入った看護婦だけね。」

「それって亡くなった婦長さんとここの診察室に何かしらの関連性があるからで、ありマショうか。」

「ふふっ。鋭いな千夏。そう、婦長さんはよくここの診察室のお手伝いをしていた。」

「それって!?」

「ちょっと待ってよ。偶然ってこともあるでしょ。例えば・・・そう!何かしらの薬品が零れて、その匂いが原因とか!」

柑奈さん・・・それは無理ありすぎでは。

そうだった場合、医者も体調不良を訴えるでしょうよ。

「ま、中を見てみよう。」


「・・・中は想像通りの診察室ですね。」

「そうでありマスな。別段何かあるって訳でもない。シンプルな診察室でありマスな。」

「薬品の零れたような跡もないし・・・それに薬品そのものが零れるような液体は無いわね。」

「柑奈の考えはすぐに医者たちも気づいたさ。でも、ここの診察室はベテランの医師が使っていたし、何より危ない薬品を患者を入れる部屋には置かないさ。」

「いい線行ってると思ったんだけどな~。」

まぁ、その考えが当たったら心霊スポットにならないでしょうしね。

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