第448話 神楽坂さんの怖い話~俺の信じてもらえない話 後編~
呆気に取られていましたが、ハッとなり宇佐美さんを確認すると、白目をむいて泡を吹いていたんです。
「う、宇佐美さんっ!?宇佐美さん!!?」
宇佐美さんに呼びかけても反応は無い。どうやら気を失っているようだ。
「す、すぐに救急車を!?」
震える手でスマホから連絡したが、全く繋がらない。
「は、はぁっ!!?」
パニックになった俺は片っ端から電話帳にある名前に電話をし続けました。
けれど、誰も電話に出ないのです。
「ふざけんなッ!!」
焦りからスマホを投げ捨て、俺は急いで宇佐美さんを抱えました。
その瞬間でした。
背中から凍り付くような視線を感じたのです。
無意識に喉が鳴り、ゆっくりと振り返りました。
「ッッ!!?」
そこには先程まで無数に、乱雑にあった赤い手が、今では綺麗に並べられ、ある文字を形作っていました。
“浮気は許さない。女は死ね!”と。
そこからは覚えていません。
無我夢中で宇佐美さんを抱きかかえたまま家を飛び出しました。
そのまま当てもなく走り続け、気が付けば会社の前で座り込んでいました。
「ど、どうしたんですか!?」
同僚の誰かの声で、俺は正気を取り戻せたんです。
それから少しの間は同僚の家に泊めてもらいました。
あの家に帰りたくないような気がしたからです。
でも、いつまでもそう言って甘えていられないので、俺は一週間もしないうちに会の平家に変えることにしました。
「た、ただいま?」
家に帰るといつもの料理は無く、代わりに紙が置いてありました。
“嫌いにならないで。私を捨てないで。”
そう、書いてあったのです。
「と、それからも服がたたまれていたり、料理は作られたりしてはいるんだけど、怖いことは起きていないようだよ。ま、あれ以来女性を一人も家に連れ込んでいないんだけどね。」
「なるほど。叔父さんの話していた“絶対に女性は入れない”という約束は幽霊が嫉妬するから。と、いうことなんでしょうか?」
「ふふっ。幽霊が嫉妬するとはね。面白い話だ。」
「そうだろう?ンフフ。式子なら分かってくれると思ったさ!」
「それで?その男性の家に私が入ることは可能なのかい?」
「え!?式子さん入る気なんですか!?」
「もちろんさ!女性である私が入れば何かしらの現象が起きるはず。ならば入らないというのは選択肢には無いさ。」
いやいや!だからって危険すぎるだろ!
「残念ながら不可能さ。」
「・・・どうしてだい?」
おっとあからさまに式子さんが不機嫌に。
「彼自身が怖くなってしまったからさ。一度目は許してもらえたかもしれないが、二度目は無いかもしれないってね。」
「そうか・・・。」
悲しそうだなぁ式子さん。
「ならば仕方あるまい。別のホラー現象を探すよ。」
「そうですね・・・ん?」
あれ?でもだったら何で合コンに参加してるんだ?
「ンフフ。」
あ・・・(察し)。
「ん?どうしたんだい優君?」
「えっと特には・・・ないです、はい。」
「そうかい?」
これはツッコまないでおこう。
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