第447話 神楽坂さんの怖い話~俺の信じてもらえない話 中編その3~

「いや嫌いなものって・・・え?」

なんというか、その紙を見て拍子抜けしてしまいました。

これまで得体のしれないものだったはずが、料理を食べないことを気にしている。

そんなことに何故か笑えてしまい、俺は食べてみることにしたんです。

「・・・美味いな。」

おふくろの味とは違いましたが、かなり美味しかった。

久々に食べた誰かの手料理に一応お礼の手紙を書き、その日は買い物に出かけました。

こんなことがいつまで続くのかはわかりませんが、食料は買い込んでおいたほうが良いと思ったからです。

「ただいま~。」

買い物から帰ると、テーブルの上に紙が置いてありました。


“リクエストはありますか?”


その日から毎日のように料理が作られていました。

残業の日はもちろん、休日などは風呂に入ってる間に用意されているのです。

「・・・なんか至れり尽くせりだな。」

この頃になると、俺はこの現象に慣れてきていました。

服はたたんであるし、料理は出来てるし、最近では部屋の掃除もしてもらえる。

まるで見えない家政婦、もしくは彼女が世話を焼いてくれているような感じです。

だから、油断してしまいました。

叔父さんに言われた『絶対に女性を入れるな!』という言葉を忘れてしまったんです。


「えへへ~。」

「ちょっと飲み過ぎですよ宇佐美(仮名)さん!」

「らいちょ~ぶ、らいちょ~ぶ!」

「大丈夫な人は一人で歩けるんですよ!」

「へいきらって~。」

「はぁ~。このまま帰したらろくなことにはならなそうだな。仕方ない、か。」

「うにゅ?」

「宇佐美さん、俺の家がこの近くなんで今日は泊って行ってください。」

「えへへ~。いいのぉ?」

「良くも悪くも、仕方ないですから。」

「うひひ~。」

酔っぱらう宇佐美さんをおんぶし、俺は家に帰ってしまったんです。

「ただいま~っと、うん?」

「おじゃましら~すぅ。」

気のせいか、何故かいつもの家の雰囲気と違ったように感じたんです。

でも、今は宇佐美さんを寝かせようと布団へ運びました。

その後、風呂に入ってテーブルの上の料理を食べました。

「・・・あれ?」

美味しくなかったのです。いつも美味しい料理が今日は美味しくなかったんです。

「・・・まぁ、失敗は誰にでもあるってことだな。」

そう楽観視し、俺は台所に毛布を持ってきて寝ることにしたんです。


深夜だったと思います。

「うぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!?!?」

宇佐美さんの悲鳴で跳び起きました。

「な、なにごと!?」

誤解させたか?そう思い弁明しようと布団のある部屋に入った時でした。

「・・・え?」

部屋中に赤い手の跡が無数についていたんです。

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