第85話 神楽坂さんの怖い話~表情が・・・中編~
次の日、部活を終えてから帰ると、公園に彼女はいました。
「よし。」
今まで無視していましたが、傘を貸したことで縁が生まれたのか、声を掛けてみようと思いました。
「や、やぁ。」
「・・・。」
「隣に座ってもいいかな?」
「・・・。」
「えっと、断らないってことは座っても大丈夫ってこと?」
「・・・。」
「ごめんね?隣に座るよ。」
彼女の隣のブランコに座ると、無表情の顔を僕に向けてくる。
それが無視していないのだと僕に思わせる。
「あの、僕はこの先の中学校に通ってるAっていうんだけど、君はなんていう名前なのかな?」
「・・・。」
「あーやっぱ僕って怪しい?」
「・・・。」
「その、怪しくないって言っても信じられないと思うけど、本当に変なことは考えていないから。」
「・・・。」
「その、ただね。気になったから話しかけたんだよ。」
「・・・。」
「あーその、何で僕を見ていたの?」
「・・・。」
「見ていた理由を教えてくれない?」
「・・・。」
「もしかして、僕って君と何処かで会ったかな?」
「・・・。」
「それとも誰かの知り合い?」
「・・・。」
どんなに話しかけても彼女は答えず、ただ僕をジッと見つめてくるだけ。
流石の僕もこれには何も出来ない。
その日は帰ることにした。
そして次の日から時間を見つけては彼女に話しかけ続けた。
相変わらず無口で何を考えているのかわからないけど、逆に言えばこちらの話しも黙って聞いてくれているのだ。
だからか、僕は彼女に僕の話をたくさんしました。
「今日はリンゴを一人で剥いて切ったんだ。まだまだ上手くできていないけどね。」
「・・・。」
「早く上手くなりたいよ。」
「・・・。」
「今日は味付けを学んだんだ。」
「・・・。」
「僕は料理研究部に入る前は醤油や味噌があればいいって思っていたけど、みりんや料理酒も重要なんだね。」
「・・・。」
「明日ね、魚を捌くんだ。今からドキドキするよ。」
「・・・。」
「君はどんな魚が好きかな?」
「・・・。」
「いや~やっぱ最初は上手く捌けないね。」
「・・・。」
「アジの開きを作ろうとしてぐちゃぐちゃなものが出来たよ。」
「・・・。」
何を話しても何も答えない彼女。
いつも無表情で一つも変わらない彼女。
次第に僕は彼女に安らぎのようなものを感じるようになっていた。
「ねぇ、君は小学生でいいんだよね?」
「・・・。」
「今の小学生の好きな食べ物って何かな?良ければ作ってくるよ?」
「・・・。」
「あ、あんまり難しいのは勘弁してね?」
「・・・。」
「僕はまだまだ初心者だからさ。」
「・・・。」
少し喋っては帰る。
それが僕の中で習慣が根付いた頃、彼女は初めて口を開いた。
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