第210話 高宮君の怖い話~鳴らない電話機中編その1~
「くっそ。折角の奢りが・・・。」
文句をぶつぶつ言いながらも手を動かし続け、仕事も終わった頃。
そろそろ帰ろうかと支度を始めようとした時、不意に電話が鳴った。
プルルルルルルル・・・・。
「ん?電話か?」
また新しい仕事じゃねぇよな?って思いながら使っている電話機を見ると、音は鳴っていなかったのです。
「ん?あれ?おかしいなぁ。」
けれど、耳をすませば。
プルルルルルルル・・・・。
やはり聞こえるのです。
深夜まで残業する事は度々あり、夜の12時に差し掛かる頃に新たな仕事を告げるような電話が鳴る事は前からありました。
しかし、それはこのオフィスにかかってくるのであって、他の部署のことは知りません。
「こんな時間ってことは間違い電話か何かか?ま、関係ないか。」
そう決め込んでなっている電話を無視をして帰る支度をしていました。
けれど・・・。
プルルルルルルル・・・・。
電話はしばらく鳴り続け、既に呼び出し音が10回以上も鳴っています。
「いやいや流石に変だろ。」
それが妙に気になってしまったのです。
「ったく。何処の電話だよ。」
鳴り続けて止まらない電話機を探しに、俺は夜の会社を見て回ることにしたんです。
「・・・ここでもねぇのか?じゃあ後は・・・どこだ?」
俺の知る限りの電話機の場所を見て回りましたが、どれも不思議なことに鳴っていないのです。
プルルルルルルル・・・・。
しかし、聞こえてくる音が鳴りやみそうにないのも事実。
最後にもう一度見て回ろう。そう思った時、ある場所を思い出したのです。
それは、喫煙室の電話機です。
「・・・いや、ありえねぇだろ。」
先輩の言う通りなら、喫煙室の電話機は電話線がつながっていない為、鳴るわけがないのです。
けれど、そこ以外の場所は鳴っていないことを確認済み。
「そう考えると、やっぱあそこしか・・・。」
一度頭が決めてしまうとひっくり返すことが困難で、湧き上がる好奇心に負けて俺は喫煙室に向かってしまったんです。
プルルルルルルル・・・・。
案の定、やはりここの電話が鳴っていました。
一応念のため、電話線が切れていることも確認しました。
「な、鳴るわけない状態で・・・。」
好奇心と恐怖から喉が鳴り、俺の右手は受話器に伸びていました。
荒くなりそうな息遣いを抑え、受話器を耳に当てると・・・。
「あ、もしもーし?やっとつながったよぉ!」
と、快活な女性の声が聞こえてきたのです。
酔ってるのか?ってぐらいに明るい調子の声に、俺はちょっとだけ面白くなってしまった。
切るのは話を聞いてからにしよう。
そう思って、間違い電話であることを相手に伝えず、俺は返事をした。
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