第209話 高宮君の怖い話~鳴らない電話機前編~

昨日の式子さんの話、とても怖くて面白かった。

今でも思い出すだけで興奮してしまう。

それに柑奈さんや麒麟園さんの話もかなり良かった。

まったく。これだから怖い話はやめられないぜ!

だからこそ、今日は僕が話す。いや、話したい!

その思いを胸に、意気揚々と部室の扉を開いた僕の視線の先で、彼は燃え尽きていた。

「・・・。」

これが絵画ならとても芸術性が高いのだろう。

椅子の座り方、表情、燃え尽きた姿どれをとってもである。

・・・ま、現実は神楽坂さんが燃え尽きてるだけなんですけどね。

「どうしたんですか?神楽坂さんは。」

「ん?やぁ優君。星夜かい?昨日の話をしたらこうなってね。」

「昨日といえば!昨日は素晴らしかったです式子さん!今日は僕に話をさせてください!」

「もちろんだよ。」

「・・・たかった。」

「え?」

「俺も聞きたかったァァァァァァァァァァァァァ!!」

うおぅ!?

「どうして呼んでくれなかったんだ!式子!」

「君は猫のように気まぐれで勝手に来るだろうに。」

「ぐっ。で、でも声ぐらい!」

「君が同じ高校ならそうだったかもな。」

「うぐぐっ!ぐやじいぃぃぃぃ。」

確かに昨日の話を聞けないのはとても勿体ない。

「今日は聞くぞ!絶対に!!」

「心配はないだろう。今日は優君だからね。」

「子犬ちゃん!滅茶苦茶怖いのを頼む!」

ハードルをあげんな!

までも、期待してくださいよ。

「これから話すのは、父が聞いた話なんです。」

「ん?君のお父さんがかい?」

「はい。父の部下の人が体験した話です・・・。」


これから話すのは、俺が前の会社で体験した話だ。

その会社には、喫煙室に電話機があったんだけど、その電話機は鳴ったことがないらしい。

「何で鳴ったことないんですか先輩?」と、聞くと。

「これっていつまでもここに入り浸らないようにって意味を込めて設置されただけで、電話線がつながってねぇの。だから鳴るはずないんだよ。」と、言われた。

今よりも仕事が忙しかった頃に、ここでよくサボる人がいたらしい。

それに怒った社長が社員が知らないうちに設置したそうだ。

でも今となってはそういうものだって知ってるからこの電話機にビビる人はいないらしい。

俺も別に怖いとは思っていなかった。あの日まで。


あの日は仕事が立て込んで、俺は深夜まで一人で仕事をしていたんだ。

週末ということもあり、「何も無ければ飲みに出かけようか」と、先輩に誘われていたのに急な仕事が入ってしまったんだ。

だから俺はやむなく遅くまで残業する羽目になったのだ。


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