第211話 高宮君の怖い話~鳴らない電話機中編その2~

「すみません、こちらは株式会社・・・ですが、どのようなご用件でしょうか?」

相手に怪しまれないように対応してみると、相手は予想外の事を言い出した。

「あのことですよね!わかってますよ!Aさん!」

「え、Aさん?」

Aさんと聞いて、俺は少し慌てました。

別部署にA主任という社員が確かに居て、その主任は部署で鬼主任なんて呼ばれる程怖い人だったからです。

ただ既に帰っているので、やんわりと断って電話を切ろうと思いました。

「あーすみません。私はBと申します。Aは本日既に退社しておりまして・・・。」

間違い電話だし、既にいないことを伝えれば向こうから切ってくれるだろと、思いながらも丁寧に答えたのだが。

「いやいや、Aさんですよね!?Aさん!私お会いしたいんですよ!!」

相変わらず明るい口調が、俺のことをA主任だと思い込んでいたんだ。

しかも、こんな時間に会いたいと言ってくる。

(もしかして不倫か?あのA主任が?マジで?)

面倒事に巻き込まれたくない俺は、話を切り上げて電話を切ろうと考えました。

だから「A主任はもう退社しています。人違いです。」と、繰り返し切ろうとしました。

けれども相手は構わず明るく快活な口調で話を続けてくるのです。

「Aさん!Aさん!!私会いたいです!今から行きます!何処にでも行きます!!」

「Aさん!」と「行きます!」という声がどんどん連呼される。

俺はこのままじゃマズいと思いながらも、何も返事ができず、ただ聞くしかありませんでした。

次第に相手の声はテープの早回しのように甲高くなり、『キリキリ・・・』と不気味な音のように聞こえた気がするのです。

そして電話を切ろうと、受話器を耳から離そうとした瞬間、これまでと一変した野太い声でこう言ったのです。


『待ってろ!!』と。


俺はヤバい!?と思い、電話を急いで切りました。

そして一刻も早く会社から出ようと、カバンを持って玄関へ向かおうとしたその時、インターホンが鳴ったのです。


ピーンポーン。


とても出られる心境ではなく、息を殺してドアモニターを見ました。

するとそこには、細くて背の高い女性が、玄関の前に立っていたのです。

(マジかよ!?)

背が高すぎて顔はカメラに映らず、首までしか見えませんでした。

けれどその代わり、手には何かを持っているのが見えたのです。


ピーンポーン。ピーンポーン。ピーンポーン。


二度、三度ぐらいインターホンが鳴らされましたが、怖くて出られるわけありません。

(何なんだよ!?)

早くいなくなってくれ!!と、思いながら俺はただただ震えながらうずくまっていました。


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