第156話 式子さんの怖い話~旅館の求人後編~
怖くなった私は電話の電源ごと引き抜きました。
「な、なに!?なに!?なに!?なによこれ!?」
荒くなる呼吸が落ち着く前に、私はパソコンの電源を付けて調べました。
昨日見た写真は変わっていて、全焼して燃え落ちた旅館が写っていたのです。
そして昨日は無かった記事がすぐに見つかりました。
死者30数名。台所から出火したもよう。
旅館の主人と思われる焼死体が台所で見つかったことから、料理の際に炎を出したと思われる。
泊まりに来ていた宿泊客達が逃げ遅れて炎にまかれて焼死。
「・・・はぁ?」
理解できなかった。
私は誰と電話をしていたの?
昨日は何でこの記事が出てこなかったの?
混乱する中、電源が入っていないはずの電話が鳴り始める。
「ひっ!」
ディスプレイに映る番号はあの旅館のもの。
体が震えて電話に出れないままに留守電につながる。
「・・・ザ・・・ザザ・・・。」
無意識に喉が鳴る。
「・・・ザ・・・ザ・・・Aさん。」
老人の声が部屋の中に響く。
「いつ、こちらへ来て頂けますか?」
「その後、Aさんはアパートから出て、実家に帰ったそうだよ。」
思わず聞き入ってしまった・・・。
「それで?Aさんのその後は?」
柑奈さんも聞き入っていたらしい。
「実家に帰ってからは旅館からの電話は無いと聞いたな。だが今でも探せばその旅館の求人はあるかもな。」
「うへぇ。あたしは旅館では働かないわ。」
「そうかい?私は働いてみたいけどな。」
式子さんの和服・・・妙に似合うな。
「何想像してんのよ優。」
「いえ別に。」
柑奈さんは・・・うん、ギャップ萌えかな。
「優君。」
「ナニモソウゾウシテイマセン。」
し、式子さんの笑顔が怖いです!
「そう言えば式子はバイトしたことあんの?」
「ないな。子供の頃からお年玉は溜めているし、お金を持っていても何にも使うこともないしな。」
「化粧品とかは?」
「母が勝手に揃えてくるから問題ないな。」
「え?化粧してたの?」
「いや、していない。休みの日に母が勝手にするぐらいだ。」
式子さんは化粧しなくても美人だしなぁ。
てか、オカルト研究会の女子は皆美人だよな。
「そんなんじゃダメよ式子。化粧は社会人には必須スキル。今のうちに練習することが社会に出ても笑われない一歩よ。」
「ふむ。そんなものか?」
「そんなものよ。化粧の仕方も知らないで社会に出た先人たちは笑われながらも必死に学んだんだから。今できることは今しないと。」
「・・・一理あるか。」
「なんなら今度あたしが教えてあげようか?」
ギャルメイクの式子さん・・・これはこれでアリだな。
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