第394話 新学期の始まり

『俺はまだまだ元気だぜ』っとでも言いたそうな熱い日差しの中、僕は通学路を歩く。

すれ違う同じ学校の生徒たちを見ると、新学期が始まったなぁってしみじみと思ってしまう。

結局合宿の後は部活動を行わなかった。

理由は知らないが、そこまで気にはなっていない。

「今日からまた怖い話を聞いたり、披露しなくちゃな。」

怖い話は夏だけでなく、春でも秋でも冬でも聞きたいし話したいものなのだ。

季節など関係なく怖い話は良いものなのだ。

そんなことを考えていると、すぐに部活の時間が来てくれる。

授業?もちろんしっかりと受けている。

なるべく授業内容は授業中に覚え、復習の時間を減らし、余った時間を怖い話に当てるのがホラー好きの僕の流儀なのだ。

今日もまた大好きな時間が始まるのだ。

「こんにちわ!・・・って、あれ?」

「ヌオオォォォォォォ・・・・。」

僕の予想では、涼し気な様子の式子さんが読書をしていて、柑奈さんがスマホをいじっていて、千夏さんがニコニコ笑っていると思っていた。

神楽坂さんに関しては特に予想はしていない。

だが現実は、千夏さんが苦悶の表情で夏休みの宿題とおぼしきノートを睨んでいるんだけど?

「あ、あの・・・。」

「やぁ、優君。こんにちわ。」

「あ、はい。こんにちわ。」

「遅いじゃない優。待ちくたびれたわ。」

「はいすいません。今日の日直の仕事僕でして・・・じゃなくて!千夏さんはどうしたんですか!?」

「自業自得のおバカさんよ。」

「はいぃ?」

「意外かもしれないが、千夏は夏休みの宿題を去年もやらずに学校に来たんだ。その時もこうして苦しみながら放課後は私と柑奈で教えてね。今年も懲りずにやらずに来たという訳さ。」

え、ええぇぇ・・・。何か予想外なんだけど・・・。

そういうのって柑奈さんの方がイメージにぴったりのような・・・。

「ちょっと優、今失礼な考えしてない?」

「い、いえ!そんなことは!?」

勘が鋭い柑奈さんは怖いんだけどぉ?

「す、優殿ぉぉぉ・・・だずけでぇぇぇぇぇぇ・・・。」

「いや普通に無理ですけど?授業で習ってないんで。」

「ヌオオォォォォォォ・・・・。」

「ほら千夏、私が教えてやるから自由に質問してみなさい。」

「あ!じゃあここの答えを・・・。」

「千夏?」

「そ、そんな怖い顔をしないで欲しいでありマス!?じょ、冗談!?冗談でありマスよ!式子殿!」

なんか・・・ちょっと新鮮かも?

「と、いう訳で今後の部活だが千夏の宿題がある程度終わってからやることにしよう。千夏は今日はここまで頑張るんだ。いいね?」

「はいぃぃ・・・。」

「去年と同じってことね。千夏、来年は夏休みにやりなさいよ。」

「はいぃぃ・・・。」

こうして僕の新学期初の部活は始まった。

ちなみに掃除用具入れの前で体育座りをしている神楽坂さんに関しては触れないでいよう。

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