第425話 式子さんの怖い話~綺麗な足 後編~
そして次の日、おかしなことが起きました。
その日も同じように朝早く起きて、支度をして、駅から電車に乗った時です。
その日は何となく新聞を読みたい気分になり、駅で購入してから電車に乗りました。
すると、電車には誰も乗っていなかったのです。
「・・・ラッキー!」
最初こそ変に思いましたが、すぐさま運がいいと思い、座って新聞を読み始めたのです。
それから電車が動き出してしばらくしてからです。
徐々に人が増え始めた頃、私の前に中年の太った男性が立っていました。
朝から汗を大量に掻き、ハンカチで何度も拭っていました。
それが何だか気持ち悪くって私は見ないように新聞で正面を隠したのです。
すると、新聞の下から見えた足が明らかに女性の足であることに気が付いたのです。
紅いハイヒールを履いた綺麗な足。
「・・・は?」
変な声が出たと思います。
顔を見上げれば中年の太った男性、新聞の下から覗く足は明らかな女性の足。
ちぐはぐな目の前の光景に頭が混乱しそうでした。
助けを求めるように周りを見ても誰も何も気にした様子もなく、隣に立っていたカップルですらイチャイチャとしているだけ。
「あ、あの・・・。」
「ん?」
「い、いえ、何でもないです・・・。」
勇気を出して隣の老婆に声を掛けようとも考えましたが、こんなことを言ったら私自身の頭を疑われると思い、何も言いだせませんでした。
しばらくその珍妙な光景を見ながら電車に揺られていると、電車の中は満員になっていました。
そして次の駅に止まった時です。
その綺麗な足は混雑している電車の中を何の抵抗もなく歩き、電車を降りていったのです。
ぽかんっと口を開けて間抜け面の私。慌てて新聞の下を見ると、そこにはちゃんと中年男性の足がありました。
何が起こったのだろう。そう思っていると、突然カップルの女性が叫びだしたのです。
『わ゛だじのあじ!どこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!??』
あれ以来、私は人を思いやるようになりました。困っている人を見れば手を差し伸べるようにしたのです。
あの日、カップルの女性は何事もないような感じでした。ですが、周りの反応を見れば、私だけが聞こえたわけでは無いようでした。
そしてあの時叫んだ女性の声は、前日に聞いた女性の謝罪の声と似ていたような気がするのです。
「以上だよ。」
「お~!何と言いますか。徐々に怖くなってくる話ですね。」
「実際こういう話は結構あるんだ。人身事故も多いからね。」
「ですよね。僕には自殺する人の気持ちをわかってはあげられませんが、そういうことが減ることを心から望みますよ。」
「そうだね。でも、幽霊に会えるなら人身事故に遭遇することも・・・。」
それは人としてダメだと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます