第424話 式子さんの怖い話~綺麗な足 前編~

部室に行くと、式子さんに襲われた。

正確に言うと、式子さんに現在首を絞められている。正直意識が・・・。

どうしてこうなったのか。

時を遡ろう。あれはそう、部室に入ってすぐだった。

僕の視界に式子さんが机にぐったりとしているのが見えたのだ。

慌てた僕はすぐに近寄り、声を掛ける。

「大丈夫ですか!?」

すると式子さんは、呻き声をあげながら立ち上がり現在に至る。

うん、わかんねぇ。

「ぐ、ぐるじぃぃぃ・・・。」

「ハッ!?す、すまない優君!!?」

「げほっ。かはっ。い、いったいどうしたんですか?」

「そ、そのこれは・・・ほ、発作のようなものさ。」

「発作?式子さんって持病があるんですか?」

「いや。私は健康優良児だよ。病気も数えるほどしか罹ってないしね。」

「じゃあ発作って何ですか?」

「あ~それは・・・その・・・。」

「式子さん?」

「・・・そのだな、私は怖い話を聞くのも好きだが、話すのも好きなんだ。」

それは僕も同じだな。

「だからこそ、ここ最近話しを聞くばかりでね。話したくて話したくて、たまらないんだよ。」

それは病気だな、うん。

「じゃあ今日は僕が聞きますよ。」

「もちろんそのつもりさ。君に拒否権があると?」

人権ぐらいはください。

「では座り給え。早速話そう。」

ま、それで式子さんが回復するならいいか。

「これはとある男性の話しだ・・・」


社会人になって2年。自分では通勤にも慣れてきたと思っている。

朝早く起き、支度を済ませ、自転車に乗り、電車に乗り、最後に歩いて会社に行く。

帰りは遅く、電車も空いていて、自転車で返る時もすれ違う人は少ない。

そんな日々を送っていた。何の変哲もない日常。

それが変わることがあった。

それは少し前のことだ。その日は珍しく残業なく定時で帰れたのだ。

気分は最高で、ぴょんぴょんと跳ねるように駅に向かったのを覚えている。

「ん?何だ?」

けれど駅は異様なざわめきで包まれていた。

「あの、何かあったんですか?」

疑問に思った私は近くにいた女性に声を掛けていた。

「なんか人身事故があったみたいですよ。」

「え?事故?てことは電車は・・・。」

「しばらくは動かないと思います。」

「マジか・・・はぁ。早く上がれたのに~。」

今思えば少し失礼だったような気もする。

自殺にしろ他殺にしろその人には何かしらの理由があったのに、この時の私は“迷惑”という以外に何も考えられなかったのだ。

だからだろう。その時は無意識でこうつぶやいてしまった。

「まったく、人様の迷惑も考えろよな。」

本当に無意識だった。だからそれに対する言葉が返ってくるとは思わなかったのだ。

『ごめんなさい。』

「え?」

隣を見ると、先程までの女性はおらず、老人が立っていたのです。

「あ、あれ?」

でも聞こえた声は若い女性だったような気がしました。

「・・・ま、いいか。」

自分自身に気のせいだと言い聞かせ、その日はタクシーで帰りました。



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