第381話 百物語合宿~お題:動物 前編~

「優君の話しも良かったが、柑奈や千夏の話しもなかなかに興味深かったよ。」

「ふへへ。そうでありマスか?式子総司令に気に入って頂けたのなら良かったでありマスよ。」

「でも、式子を驚かすまではいかないのよね~。はぁ。一度でいいから式子を驚かしたいわ。」

終始笑顔ですもんね、式子さん。

「ふふっ。私は並大抵のことでは驚かない自信はあるんだよ。」

「いやでも柑奈さんの猫の話し、あれもシンプルに怖いですよね。」

「ふふん!そうでしょ。あれは親父が・・・こほんっ。何でもないわ。」

あ、あの父親から聞いた話なんだ。


あれは、私の親が再婚する前の話しです。

当時の私は少しボロいアパート住まいで、小学校から帰ってくると誰もいないのが当たり前でした。

そんな私を憐れんで祖父母が猫をプレゼントしてくれたんです。

最初は母親もいい顔をしませんでしたが、私の喜んでいる姿に何も言えなかったそうです。

私はその猫に『ペケ』と名付けました。

ペケはとてものんびり屋の猫で、私が帰って来ても微動だにせず、いつも私から撫でまわしに行っていました。

そんなペケには不思議なことがあったんです。


「んぅ・・・ん?ペケ?」

深夜に起きると、一緒に寝ていたペケはおらず探してみると、台所のテーブルをずっと見ているのです。

「ペケ、こんなところでどうしたの?一緒に寝よう。」

「・・・。」

反応のないペケを抱きかかえようとすると、すぐさま暴れて逃げ、そしてまたじっと見ているのです。

「ペケ・・・。」

眠気やそのうち戻ってくるだろうという楽観的な考えが、私にそれほど重要視させなかったんです。


「ねぇ、お母さん。」

「ん?何?お夕飯ならまだだけど。」

「ううん。ちょっと気になった事なんだけど・・・。」

「何?」

「ペケがね、夜中ずっとこのテーブルを見てたの。なんか理由があるのかなって。」

「え~・・・。気にしすぎなんじゃないの?このテーブルは・・・その、ね。別に特別な物でもないし、変なところもないでしょ。」

微妙に濁した母親にほんの少しだけ疑問を覚えましたが、母親の言うことは間違っていないという思いが強い私はそれ以上は追及しなかったんです。

けれどペケは、それからもずっと深夜にテーブルを見ているのです。

「今日もだ。」

気になってしまった私は深夜に起きるようになっていました。

「ねぇ、ペケ。何か見えてるの?それとも何でもないの?」

「・・・。」

「ペケ・・・。」

猫が話せるわけがないことは知っています。

けれど、ペケは明らかに何かを見ていたんだと思うんです。

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