第250話 式子さんの怖い話~そのカルテは・・・。中編その4~

Sさんとは誰なのか。

何故、深夜1時に受付記録されているのか。

そして・・・カルテは何処に消えたのか。

病院内ではその話で持ちきりになりました。

Aさんが注意はしてくれていますが、不気味なのは事実で、看護婦たちの不安もわかるのです。


「・・・先生。」

「ああ、Aさん。すみません。こんなことになってしまって。私が変に拘らなければこんなことには・・・。」

「確かめてみませんか?」

「はい?何をですか?」

「Sさんですよ。このままでは院内だけでなく患者さんの間でも噂になりかねないでしょ。だから確かめるのです。Sさんが誰なのか。もしかしたら質の悪いイタズラかもしれないじゃないですか!」

「それは・・・確かに。けど、どうやって確かめるんですか?監視カメラでも付けますか?」

「いいえ。自分の目で確かめましょう。」

「ええ!?」

「その方が納得がいきます。深夜1時と受付時間は決まっていますし、何よりそろそろ前回の診察から二カ月です。カルテは二カ月に一回の頻度で診察を受けているんですよね?」

「え、ええまあ。ですが、危険ですよ?」

「十分承知しています。けれど、私も気になって仕方ないのです。だからこそ!私たちで確認しましょうって言ってるんです。」


Aさんの言う通りなのは確かだ。

噂が独り歩きするぐらいなら自分の目で確かめればいい。

私は覚悟を決め、その日から病院を一度閉めてから夜中の12時にもう一度開け、1時半まで待つことにしたのです。

来る日も来る日も待ったかいがあり、遂にその日が来たのです。


「先生、コーヒーを入れました。」

「ありがとうAさん。」

「今日は来ますかね?」

「どうだろうね。正直来るかどうかも・・・ん?」

「どうかしましたか?」

「今・・・音がしなかったか?」

「え?」


私とAさんはそっと受付に向かいました。

すると、消したはずのパソコンの電源は入っており、受付に記録されていたのです。

Sさんの名前が。


「っ!?」


緊張が走りました。

本当にSさんが訪ねてくるなんて思っていなかったからです。

恐る恐る待合スペースを覗くと、そこには誰もいないのです。


「だ、誰もいませんね。」

「う、うん。でも、記録はされたね。」

「せ、先生!診察室に行ってみましょう。」

「そうだね!・・・え!?」

「どうしたんですか先生?」

「・・・親父?」

「はいぃ!?」


私は父が診察室に入って行くのが見えました。

けど、それはありえないのです。

何故なら父は意識はあるけれど、脳梗塞で倒れてからまだ入院していたからです。

だからこの病院に父がいるはずがないのです。

けれど私は・・・確かに見たのです。

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