第435話 式子さんの怖い話~嫁との出会い 後編~

「よぉ!」

「ん?えっと・・・もしかしてだけど忠司ただし(仮名)か?」

「おいおい親友の顔を忘れるなよ!」

「いや親友って・・・。俺たちそんな仲良くはなかっただろう。」

「細かいことは良いんだよ!それに仲悪くも無かっただろ?」

「それはまぁ。」

「そんなことより!こんなところで何やってんだよ?」

「ああ。ちょっと知人の手伝いでな。そうだ!忠司(仮名)は知らないか?ここら辺でひき逃げが遭ったんだけど・・・。」

言いながら、忠司(仮名)の顔から笑みは消え、だんだん罰が悪そうに目を背けがちになっていました。

「・・・知ってるか?」

「い、いや、俺は何も・・・。」


『う、ううぅ・・・。』


忠司(ただし)を訝しんでいた時です。何処からか男性の呻き声のようなものが聞こえてきたんです。

「何だ?」

そうつぶやいた時です。紀子のりこ(仮名)が手に持っていた写真が、忠司(仮名)に向かって勢いよく飛んで行ったんです。

「うぎゃ!?」

忠司(仮名)が悲鳴をあげて倒れました。そして写真が真っ赤に染まっていたんです。

「お、おい!?大丈夫か!?」

忠司(仮名)が怪我をしたと思い、慌てて様子を見ようと近づいた瞬間。


「ウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!」


写真から獣のような唸り声が響いたのです。

「ご、ごめんな゛ざいぃぃぃぃぃぃっっ!!?!?」

紀子(仮名)が慌てて近づいてくる前に忠司(仮名)が泣きながら謝ったのです。

「た、忠司(仮名)?」

「お、俺が!俺がやったんだよぉぉぉぉぉぉっ!!」


それからすぐに紀子(仮名)が警察に連絡してくれました。

駆け付けた警察に泣きながら忠司(仮名)はしがみ付き、写真から逃げるようにパトカーに乗りました。

訳が分からないまま後日、私は紀子(仮名)から話を聞くことができました。

「犯人の男性がひき逃げした時には、弟はまだ生きていたそうです。けど、内定が取り消されるのが怖かったそうで・・・。」

どうやら忠司(仮名)は有名企業からの内定が取り消されるのが怖くて逃げたそうです。

「色々とありがとうございました。それでその、今日は写真を・・・。」

「え?」

あの日から、弟君の写真は消えてしまいました。まるで役目を終えたように。

それから何度か紀子(仮名)と会ううちに向こうから告白され、結婚することにしました。今では新しい職場で苦戦しながらも一生懸命に働いています。

愛する紀子(仮名)と産まれたばかりの子供の為に。


「以上だよ。どうだい?とても感動的で、素晴らしく不思議で、怖い話だろう?」

確かに。結局写真はどうして存在していたのか。

犯人を見つけるために天国から弟さんが送ったのか。

呻き声、唸り声は?謎がありつつも何処かホッとする話だ。

「そうですね。個人的に、好きな部類に入る怖い話です。」

「ふふ。そう言ってもらえると嬉しいね。さて、帰ろうか。優君。」

「はい!式子さん!」

明日は僕が怖い話を披露しよう!今から楽しみだ!

「ところで優君は・・・その、ね?」

おっと!その手の質問は彼女いない歴=年齢の僕には答えられない質問だ!

止めて頂こう!!

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