第172話 麒麟園さんの怖い話~1時間彼女後編~

「ってことがあってさ。」

「そいつってストーカーじゃねぇの?」

「やっぱりそう思うか?」

「それ以外にねぇだろ。大方お前がその例のお姉さんと仲いいのが気に入らねぇんだよ。」

「このことをお姉さんに話した方が・・・。」

「言ったほうが良い。んで、引っ越しを勧めろよ。ストーカーに居場所バレてるんだからさ。」

「わかった。」

その日男子学生は家に帰り、深夜を待ってお姉さんにそのことを打ち明けました。

「・・・そっか。だから元気なかったんだ。」

「すみません。俺、お姉さんに迷惑かけたくなくって・・・すみません。」

「クスクス。君は本当に優しいなぁ。私が出会った人の中で一番かも。」

「そんなことは・・・。」

「・・・あいつ邪魔だな。」

「え?」

突然の怖い声に男子学生は驚きを隠せませんでした。

「ねぇ!君は私のこと好き?」

けれど、先程の声が嘘のようにお姉さんは話しかけてきました。

だから男子学生も深くは気にしなかったのです。

「あ、あの!その・・・好き、です。」

「クスクス。私も君が好き!だからさ、一緒に引っ越そう?」

「え!?お、俺もですか!?」

「・・・ダメ?」

「いえ!俺でよければどこまでもついて行きます!」

「それ私のセリフだよ~。・・・じゃああいつを消そう。」

「え?何か言いましたか?」

「ううん。そうと決まれば善は急げ!早く引っ越そう!私が君の側にずっといるからね。」

「はい!」

引っ越しして半年もしないうちに男子学生は引っ越しました。


男子学生が引っ越した翌月に男性がアパートを見に来ました。

「こちらは部屋は広いのですが、とても古くて・・・。」

「あの、隣の人ってどんな人ですか?僕、怖い人の隣は・・・。」

「あ~それにつきましては問題ありません。隣の102号室はもう何年も入居者がいませんから。」

「そうなんですか?」

「ここだけの話ですが、ここの202号室って心理的瑕疵物件しんりてきかしぶっけんなんですよ。」

「え!?」

「お祓いを頼んだんですが、亡くなった女性の霊が強すぎて・・・。まぁ、物好きな男性が住んではいるんですけどね。」


「その後、アパートが取り壊される際に男性の遺体が見つかったそうでありマス。」

えっと・・・どこがロマンティック?

「ふふ。つまり男子学生が話していた人物はもうこの世にいない人で、文字通り一生憑いて行ったということだね千夏。」

「そうでありマス!ちなみに自分の予測ではストーカーと言われた男性が遺体として見つかったのではないでしょうか!」

「ふふ。いい考えだ。」

楽しそうなお二人さんには申し訳ないけど肝心の尾口先生は・・・。

「女性の霊にもモテない僕って・・・ハハハ。」

うん、問題なしということで!

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