第185話 尾口先生の意味が分かると怖い話3前編

「そういう悩みがあるなら色々と先生に聞いてみるといいよ。いろんな先生がいるから色んな考えが聞けるからね。」

「ありがとうございます尾口先生。」

「うんうん。また何かあったら僕に聞いてもいいからね。さて、じゃあ行ってみようか!」

うん?何だっけ?

「次の意味が分かると怖い話は主婦が主人公だからね。よく考えながら聞くんだよ優君。」

「あ、はい。」


私の人生は順風満帆だ。

高校生活も、大学も楽しい思い出ばかり。

大学生活で知り合った主人と大恋愛の末に結婚。

少しばかり働いてみたかったけど、子供が落ち着いてからでも悪くない。

そう、思っていました。

「あーあーあー。」

「どうしたのA君?」

「あーーあ゛あ゛ぁ!!」

「ちょっと!?物を投げないでよ!?」

お腹を痛めて産まれてきた息子は精神に疾患のある子でした。

赤ちゃんの頃はそれほど問題ではなかったのですが、六歳となってくると自分で動けるようになるのでとても苦労します。

ボーっと窓の外を眺めているならまだ良いほうです。

何か機嫌が悪いと暴れだし、物を投げつけてきます。

何がいけないのか聞いても『あーあー!』とか『いー!!』などと。

会話が出来ないのです。

「あ゛あ゛あ!!」

「ご、ごめんねA君。ごめんね。」

だからいつも私は息子に謝ってしまうのです。

けれどこんな子でも私の息子。

寝顔や笑った顔は天使のように可愛くて、拙い言葉で『まま、ありあと。』って言われると愛おしく思います。

この子の為に頑張ろうって思う反面、主人が羨ましく思うこともあります。

「ただいま。」

「おかえりなさい。ご飯にする?それともお風呂?」

「う~んご飯にするかな。今日は何?」

「今日はハンバーグよ。」

「本当かい?君の作るハンバーグは大好物だよ。」

主人はとても優しく、本当に私を愛してくれます。

私に頼み事にも嫌な顔もせずに受けてくれるし、家事や掃除も進んで行ってくれます。

けど、育児だけはしてくれません。

息子の話を嬉しそうに聞いてくれますが、それだけです。

「今日もA君癇癪起こしちゃって。また物を投げられちゃった。」

「本当かい?怪我は無いかい?」

「私もA君も大丈夫よ。物も壊れてないわ。」

「よかったよ。ところで、来月の幼稚園の親子参加なんだけど・・・。」

「やっぱ仕事が忙しい?」

「うん、ごめんね。」

「いいのよ。お仕事は大切でしょ?気にしないで。」

「うん。でも、君にばかり押し付けて、申し訳ないよ。」

「いいの。私はA君の為に出来ることはやりたいもの。だから気にしないで。」

「うん、ごめんね。」

「もう!そんなことよりご飯冷めちゃうでしょ?早く食べて。」

息子の話になると、主人は少しだけ寂しい顔をするんです。

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