第247話 式子さんの怖い話~そのカルテは・・・。中編その1~

だが、私は元々結婚願望が薄い人間なのだ。

お見合いをしたからといってすぐに結婚には踏み切れはしないだろう。

だからいつも・・・。


「いや~今度の休みはカルテの整理をしようかな~って、思っていてね。」

「もう!そんなのは若い子たちにやらせればいいんですよ!あの子たち、仕事中だっていうのにペチャクチャペチャクチャ話してばっかなんですから!」

「ハハハ。いいじゃないか。それだけ暇ということはみんな健康だという証拠だよ。」

「それはそうですけど・・・けどですね!」

「A君、私はこの病院を好きになりたいんだ。昔は親のレールを走っているようで嫌いだったが、今は違う。親父が入院して、A君たちが快く迎え入れてくれて、私はこの病院を好きになりたいと思えたんだ。だから、患者のことをもっと知っておきたいんだよ。」

「先生・・・。」

「そういうわけだから今度の休みのお見合いは無しで。」

「・・・それが狙いでしょ!!」

「ハハハ!」

「もう!」


確かにお見合いをしたくないというのも理由の一部ではある。

けれど、この病院を好きになりたいと思っているのも事実なのだ。

だからもっと患者のことを知りたい。

その思いを胸に、私は日曜日にカルテの整理を始めました。


「ふぅ。とりあえず歩けるようにはなったな。」


カルテの量が量で、段ボールにもう使わないものも入っていて、軽い物置みたいになっていた。

段ボールを整理し、まだ使われているカルテの棚を目の前にようやく私は一枚一枚丁寧に確認していました。


「ふむ。この人は過去にインフルの経験ありと。こちらは・・・ん~皮膚病か。余り知識はないなぁ。紹介状の書き方も覚えておくか。あ~そうなると医師の飲み会には参加しとかないとな。」


あまりの量に今日は目の前の棚のみにすることにし、お昼ご飯を食べてから戻ってくると、一枚のカルテが落ちていたんです。


「あれ?落としたかな?申し訳ないなぁ・・・。」


そのカルテは青のファイルに入っていることから今も使われているものだとすぐにわかりました。

うちはカルテをわかりやすく分けていました。

青のファイルのカルテは今も病院を利用する可能性がある人。

黄色のファイルは残念ながら亡くなってしまい、利用することの無い人。

と、いう感じだ。


「えっと・・・ん?Sさん?知らないなぁ。」


そのカルテはSさんという人のカルテで、過去の記録をみても風邪以外罹っていない、いたって健康的な男性のカルテだった。

けれど、私は知らない人だった。

年齢からみても私と同じ年代。

地元の人間ならば学校で名前ぐらい見たことあると思うが、こんな名字を見たことは無かった。

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