第374話 百物語合宿~お題:犯罪 後編~

「な、なんで!?」

男性は録画したビデオのように同じことを繰り返して眠りにつきました。

そして知っている光景が始まる、そう思ったんです。


ガチャ。


セーラー服を着た女の子が入ってくる。

ここからしばらく立って、そしてあの男性を包丁で刺す。

パソコンの電源を落そうにも、瞼を閉じようとしても、体は全く動かないのです。

見たくない光景が始まってしまう、そう思った時です。


『・・・ふふっ。』


女の子はいつもと違う動きをしたのです。

男性に近づかず、立っていたその場で可愛らしく、くるっと回ってこちらを見たのです。


『こんにちは。』


とても人を殺しそうに見えない純粋な笑顔。

そして自分が見ていることを知っているかのような口調。

声すら出せないままに、自分は女の子を見ていました。


『昨日も、一昨日も、見ていましたよね?ふふっ。』


逃げ出したいのに動かない体に対する苛立ちと、笑う女の子に対する恐怖。

頭の中で様々な感情が目まぐるしく動き回り、混乱した目から涙が零れました。


『あなたは私が見えている。だ・か・ら。ふふっ。』


先程までは普通の目だった女の子の目が真っ赤に染まる。

まるで血のように。


『会いに行ってあげるね。』


そこからは何が起きたのか覚えていません。

気がつくと、自分は布団で眠っていたのです。

「・・・ゆ、め?」

脳が覚醒すると、すぐさまパソコンを見ました。

電源は付きっぱなしでしたが、何の変化もカメラは見せていませんでした。

もちろん、男性の姿も無かったのです。

「何なんだよぉ・・・。」

自分はその日をいつも通りに過ごし、帰宅してすぐにパソコンを付けました。

カメラを見ることにあれほど抵抗感があったのに、不思議と流れるように見ていたのです。

そして、異変に気付きました。

「ふひひ。今日も猿共がハッスルに・・・あ、あれ?」

5番のカメラに写っている風景。

それは、見れば瞬時に分かる場所。

「じ、自分の、部屋?」

5番のカメラに映るのは自分の部屋。

今の時間じゃない。

その証拠に、自分自身が布団で眠っているのが目に入る。


ガチャ。


聞きなれた音と共に、あのセーラー服を着た女の子が入ってくる。

ニコっと、カメラに向かって笑うと、包丁で自分を刺したんです。

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!?!?」

何度も刺される自分。

条件反射でお腹を見れば、傷一つない。


『あははははははは!!!!』


女の子は、自分を刺して笑っていました。


「以上です。」

「・・・え?終わり?」

「はい。この話はここで終わりです。」

「ど、どうなったのよ盗撮犯は!?女の子は!?」

「落ち着け柑奈。優君の聞かせてくれた話を推察すれば答えは明白だ。」

「どういうことでありマスか?」

「この男性は過去を振り返っている。つまり無事なのだろう。そして女の子だが、おそらく今もその男性に憑いているのだろう。」

「な、何でそんなことが言えるわけぇ!?」

「過去を振り返っているのに、お祓いをしたとか、何で女の子がそこにいたのかという理由がない。つまり、現在進行形なのだろうと予想が立つ。」

「なるほどでありマス。」

「怖っ!!何て言う話を聞かせるのよ優!!」

いや、あんたらがそれを言うのかよ!!

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