第228話 高宮君の怖い話~鏡の向こう側後編~
先生たちは半ばパニック状態ではあったものの、すぐさま臨海学校の職員を呼び、警察を呼び、事態は大きくなった。
大人たちのうるさい音でチラホラと起きてきた生徒を近づけさせず、職員や警察に事情を話し、Aにずっと声を掛けていた。
朝日が昇る頃には、冷静になった先生たちが俺たち以外の生徒をバスへと誘導し、そのまま理由も説明せずに帰宅させていた。
俺らはというと、念入りに事情を聴かされた。
でも、俺らにも何が起こったのかわからなかった。
俺たちが帰る頃も、Aはずっと突っ立ていた。
後から先生が話してくれた事にによると、残った先生と臨海学校の職員、警察達とで話合いがされたそうです。
この建物は何のためにあるのか。
どうして鏡だけあるのか。
過去にも同じようなことは起きていないか。
Aを助ける方法はないのか。
鏡の中の女について何か知らないか。
色々と質問攻めにしたが、職員たちはほとんど答えられなかった。
この建物は何にも使ってないし、鏡があることも知らなかったし、今までそんな話は聞いたこともないし、Aを助ける方法も女のことも知らないという返事しか返ってこなかったそうだ。
解決の糸口も見えないまま、警察はあの建物を封鎖することにした。
Aについては臨海学校中のウォークラリーで行方不明になったということになり、警察が直接Aの両親に事情を説明した。
信じることのできなかったAの両親も、鏡の中にいるAを見て、早々に引っ越していった。
あれから結構な年月が経った。
先生たちはすぐに責任を取らされ、教職を追われた。
他の生徒たちは急な担任教師の変更に戸惑っていましたが、すぐさま慣れ、何事も無いように俺たちと共に卒業した。
鏡の中にいた女の人は何だったのか。
Aはどうなってしまったのか。
正直わかりません。
けれどこれだけは断言できる。
Aは紛れもなく生きていたんだ。
鏡の向こう側の世界ではなく、この世界で。
「・・・以上です。」
ドヤァ。この上出来の話は!
「・・・ふふ。」
「式子さん?」
「なかなかに素晴らしい話だったよ。思わず聞き入ってしまった。」
「自分もでありマス!次の展開を早く聞きたくてたまらなかったでありマス!」
「柑奈さんは?」
「よかったわ。何て言うか、怖さの中にある妙な不思議さが、その、変な感じだけど怖くはなかったわ。」
おや?意外と怖がる柑奈さんが今回は怖がっていない?
「ふふ。確かに不思議さはあるな。」
「今も鏡の中なのでしょうか?」
「さぁね。」
その答えは僕も知らない。
けれど、僕はA君が無事であることを、密かに願っている。
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