第11話 高宮君の怖い話~メリーさん?後編~

怖くなったAさんはこのことを両親に話しました。

「いつからこの手紙は来ているんだ?」

「お兄ちゃんが大学に戻った頃からだったと思う。」

「パパ、警察に連絡したほうがいいわよね?」

「う~ん・・・そうだな。パパもママもAにこんな手紙を書いていないし、お兄ちゃんも大学で頑張っているから書かないだろうしな。ちなみにだ。Aの部屋で無くなった物はないのか?」

「え?」

「誰かがそのクマのぬいぐるみの下に置かなければ手紙なんてないだろ?もしかしたらまた空き巣の可能性もあるからな、一応な。」

「たぶん・・・何も盗まれていないと思う・・・。」

「わかった。じゃあ警察に相談してみよう。Aはさっきの話をもう一度話してくれ。いいな?」

「うん。」

それから両親は時間を取り、Aさんと共に警察に行き、事の経緯を話した。

一度、空き巣に入られていることもあり、警察は念入りに家の中を操作し、しばらくの間、家を見張っていてくれることになりました。

「せんぱ~い。本当に空き巣が戻ってくるんですか~?」

「ありえないな。よくドラマで犯人は現場に戻るって言うが、実際はあまりそんなこともないしな。」

「ですよね~。」

「だが、現実に手紙があるのも事実。あの子が自作自演しているような様子もない。それにずっと気になっていることもある。」

「気になっていること?」

「クマのぬいぐるみだ。空き巣犯は何でクマのぬいぐるみも持っていたんだ?」

「それは・・・!?先輩!?今、何かが家の中に入って行きました!?」

「何!?」

慌てて車から飛び降りた二人は急いでAさんの家に向かい、呼び鈴を鳴らしました。

驚いたAさんの父親は慌てて扉を開けました。

「ど、どうしましたか!?」

理由も言わずに警察は家の中を調べ始めました。

すると、Aさんの部屋の前にクマのぬいぐるみと手紙が置いてあったのです。


ただいま!


たった一言、そう書いてありました。

そのクマの手には赤い染みがあったそうです。


「その後、警察の調べで森の中で変死した男性の遺体と、盗まれたAさんの家の無くなった貴重品があったそうです。以上でおしまいです。」

「ふむ。」

式子さんは僕の話をみしめるように頷く。

「とても面白い話だな。どこかメリーさんにも似ているのが実に面白い。」

「そうですよね~僕も聞いた時はメリーさんから派生した作り話だなって思いましたから。」

「けれど、作り話ではないと思っているんだろ?」

「はい!実際に調べたら確かにその事件はあったんです!」

「ならば、人の思いがぬいぐるみに乗り移り、受けた災いを犯人に返したのかもしれない。」

「ですね!」

「一つだけ聞いてもいいかい?」

「何ですか?」

「そのクマのぬいぐるみは今でも?」

「あるそうですよ。Aさんの家に。」

「ふふっ。今度見せてもらいたいね。そのぬいぐるみを。」

「聞いときますね!」

初めて人に怖い話を披露した僕は、家に帰るまでとてもいい気分だった。

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