第6話 式子さんの怖い話~しんちゃん後編~

しんちゃんが声に反応して止まった時、目の前をトラックが過ぎて行ったのです。

もし、声を無視していたら・・・。

そう思ったら怖くなってしまい、しんちゃんは遊ぶ気にもなれず、家に帰りました。

家に帰ってお母さんにそのことを話すと、お母さんはこう言いました。

「それはきっとしんちゃんを助けてくれたのよ。あの子が自分の分までしんちゃんには元気で生きていて欲しいって、そういう願いなのかもしれないね。」

その言葉を聞いた瞬間、止まっていた時間が動いたように涙が零れ始めました。

自分は弟のこといらないって思ってしまったのに。

亡くなった時悲しいよりも嬉しいと思ったのに。

もしかしたら自分が殺してしまったかもしれないのに。

その思いが渦になり、しんちゃんに涙を流させたのです。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

止まらない涙と共に、しんちゃんは何度も謝りました。

次の日から、しんちゃんは弟の仏壇に毎日のように拝んでから学校に行くようになりました。

弟の分まで生きよう。

精一杯生きて、弟が自慢できる兄になろう。

今日もしんちゃんは元気に過ごしています。

「ん?何か留守電か?」

仕事で遅くなった父親が留守電を聞くと、凍り付きました。

その留守電にはこう入っていたのです。

「しんちゃんまえ・・・しんじゃんまえ・・・しんじまえ・・・死んじまえ!!」


「以上で今日のお話しは終わり。」

「ふぅ~。すごいお話しでした。」

手の汗をぬぐい、すぐさま式子さんに感想を言う。

「僕、最初は感動のお話しなのかと思いましたよ。」

「ふふっ。私もこのお話を聞いた時はそう思ったよ。けれど、“しんちゃんまえ”という言葉が引っかかってね。」

「もしかしたらしんちゃんにもお父さんのように本当は聞こえていたのかもしれませんよね?」

「そうかもしれないし、そうとも言い切れない。何にせよ、しんちゃんは知らない方がいいことさ。」

「ですね。」

式子さんは立ち上がり、本棚から一冊のノートを取って戻ってくる。

「式子さん?それは何ですか?」

「活動日誌だよ。今日話した人、話した内容を簡単にまとめておくんだよ。」

「それがオカルト研究会の活動の一つなんですね!」

「ああ。君にも慣れてきたら話してもらおうと考えているから仕入れておくんだよ。」

「はい!」

ノートにまとめた式子さんはカバンを持って立ち上がる。

「では、顧問の尾口おぐち先生に提出してくる。君は帰っていいよ。」

「お疲れさまでした!」

明日の話を楽しみに、僕は帰路に就いた。

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