第7話 式子さんと朝の怖い話~その人はいったい・・・前編~

今日も僕ははやる気持ちを抑えて学校に向かう。

今日はどんな話を聞けるんだろう?

それとも僕が話してもいいのかな?

そんなことを考えてまだ見慣れない道を歩いていると、目の前を最近覚えたシルエットが歩いている。

「あれって・・・。」

確認するように速足で追いつくと、やはり式子さんだ。

「おはようございます!」

「やぁ、おはよう。」

式子さんの横に並んで歩き始める。

「朝早いんですね式子さん。」

「そうかい?」

「はい。僕、普段はもっと遅いんですよ。けど今日は日直で。式子さんも日直ですか?」

「いいや。私は実験の為に朝早く学校に行ってるんだ。」

「実験?どういうことですか?」

「ふむ。まだ部活の時間ではないが・・・まぁいいだろう。」

軽く咳払いし、式子さんは話し出す。

「君は、こんな話を聞いたことないかな?」


A君は朝練の為、毎日のように朝早くに部室に向かい、準備をしている。

ところが、部活で頑張りすぎたA君は腕を故障してしまった。

「当分の間は安静にしていてください。」

「せ、先生!当分の間って・・・。」

「そうですね・・・二週間は安静にし、少しづつリハビリしていく形にしましょう。」

「そんな!?」

部活を禁止されたA君でしたが、普段の日課を変えることが出来ず、朝練もないのに学校に向かいました。

「はぁ、誰もいないよなぁ。」

教室で寝ようと、扉を開けると知らない女性が黒板の前で立っていました。

「え!?」

驚いて声をあげると、女性は笑顔で挨拶をする。

「おはよう。」

「あ!お、おはようございます!?」

「ふふっ。朝早いんだね。」

「えっと・・・。」

「あ、ごめんね!驚いたよね。私はね・・・。」

その女性は教育実習生で、学校に慣れたくて朝の時間だけ教室を借りているとのことでした。

「でも私も驚いたな~この時間は部活の生徒しかいないと思っていたからね。」

「あ~僕もその一人だったんですけど・・・その、腕を故障しちゃって・・・。」

「大変!?大丈夫!?」

「あ!へ、平気です!二週間安静にしてればいいんで!」

「そっか~よかった~。」

ホッとした彼女の安堵した顔にドキッとする。

「い、いや~習慣って直しにくいですよ~!?」

話を逸らすように適当な話を振ると、女性は笑顔になってこう答える。

「じゃあこれから二週間はお話しできるね。」

その瞬間、A君は恋に落ちました。

それからA君は億劫だった朝早くの登校が楽しくなりました。

その女性とA君はいろんなことを話しました。

互いの趣味や家族構成、好きな食べ物や得意な教科、苦手な教科。

何気ない会話が楽しくて、永遠に続けばいいとさえ、A君は思いました。

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