第418話 高宮君の怖い話~向こう側の彼女 前編~

「ただいま~。」

式子さんの私事により、今日の部活が急に無くなった。

別段学校に用事も無いので、真っすぐに家に帰ると母親はいなかった。

「母さん?」

何となくリビングに行くと、テーブルの上に“買い物へ行ってきます。”と、母親からのメッセージがあった。

この時の僕は心の中で密かにガッツポーズを決める。

そう、家に誰もいないということは僕の趣味を楽しめるということだ。

鼻歌を奏でながら部屋に荷物を放り投げ、リビングに戻ってくる。

ウキウキ気分でパソコンの電源を付けた。

そうなんです。この家にパソコンは2台。一つは父の書斎でもう一つがリビングだ。

自分のパソコンが欲しくて、高校に進学をした際に両親に頭を下げてお願いしたが、父親からの一言。『欲しいのなら自分で買いなさい。』と。反論したかったが、何だかカッコ悪くて言葉を飲んだ。

以来、僕がパソコンを使用できるのはこういう時だけなのだ。

最も、僕の趣味が気味悪くて家族会議になってしまったことも起因しているんだけどね。

「さてさて。今日の恐怖体験は何があるかな~。」

僕の趣味、それは様々な人が掲示板の書いた恐怖体験を読むことである。

「お!これから読むか!」


これは僕が体験した恐怖の出来事です。

小学校の頃から内気な僕はクラスに馴染めず、中学の上がる頃にはクラスに友達もいませんでした。部活も図書部にしたので、基本的には一人での活動。自分で自分の首を絞める形になり、結局中学卒業まで友達の一人も出来ませんでした。

そんな僕でしたが、思春期特有には抗えませんでした。

彼女が欲しい。そんな思いは人並みにあったのです。

「でもこんな僕じゃ彼女なんて・・・。」

そう思っていた日曜日、不意に父が付けたテレビに流れたCMに目を奪われました。

『あなたの理想の彼女を育ててみませんか?そんな夢をかなえるのが・・・』

そんなフレーズが流れていたと思います。

それは当時大流行することになったゲーム、“理想の彼女”である。

僕はすぐさまお年玉を親から返してもらい、そのゲームを買いました。

家に帰ってすぐに部屋に行き、ゲームを起動しました。

『貴方の好みのタイプを教えて。』

自分の代わりになる主人公は名前だけしか決められなかったのに、彼女の設定は事細かく入力しなければなりませんでした。

「これが最近のゲームなんだ。すげ~なぁ。」

そう思いながらも一時間もかけて彼女の設定を作りました。

入力し終わると、画面が暗くなりました。

「ん?壊れたのか?」

でも暗くなっていたのは一分ぐらいで、すぐに冒頭部分が流れ始めました。

「な~んだ。ロードが長いだけか。」

だから僕は全く疑問に思わなかったんです。

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