第242話 高宮君の怖い話~探していた人は・・・。中編その2~

「B先輩、私事で申し訳ないんですけど、ちょっと相談してもいいですか?」

「お?何々?遂にAちゃんにも春か?」

「いえ実は・・・。」

僕は思い出せないのに気になる夢の話をしました。

最初はおどけていたB先輩も少しづつ真面目に聞いてくれました。

「ふ~ん。Aちゃんはどうしても気になんの?」

「はい。目が覚めると全く覚えていないのに、どうしても覚えてなければならないっていう気がして。」

「俺ちゃんは専門家じゃないから良いアドバイスは出来ないけど、きっとAちゃんが忘れたくなかったことを今は忘れてるんじゃないの?」

「どういうことですか?」

「忘れてはいけない記憶。なのに今のAちゃんは忘れている。だからそれを思い出させようと無意識のAちゃんがAちゃん自身に働きかけてるんじゃないのって話。」

「忘れてはいけない記憶・・・それって・・・。」

「おっと。それ以上は俺ちゃんは答えられないぜ。その答えを知ってるのは俺ちゃんじゃない。きっとお前のお母さんじゃね?」

「母ですか?何で母が?」

「さぁて。俺ちゃん酔っちゃった。」

それ以上は話したくないというような雰囲気を感じ、僕はB先輩の美しすぎるお嫁さんの話を聴いていた。

「う~ぃ。飲んじゃね~。」

「酔いすぎですよB先輩。」

「ええんやで酔って。なんつって!」

「ほらタクシー来ましたから。乗ってください。」

「・・・Aちゃん。」

「はい?」

「本気で答えを知りたかったら会社休んでもいいからな。」

「え?」

「バイビー!」

それだけを言い残して去って行ったB先輩。

それが何だか・・・そう、B先輩には僕が気になっていることが分かっているようでした。


「じゃあ今度の金曜日に帰ってくるのね?」

「うん。B先輩には会社休んでもいいって言われたけど、やっぱ気が引けちゃって。」

「Aらしいわね。」

「母さん。」

「何?」

「・・・やっぱ何でもない。」

「何よ?」

「母さんの顔を見ながら聞きたいんだ。」

「あはは。変なA。」

そうしろと、頭の中で命令された気がしたから。


「やっぱこっちは寒いなぁ。」

金曜の夜、残業を免除された僕はその足で地元に、母さんの待つ家に帰ることにした。

電車に揺られ、何度か乗り継ぎ、人がほとんどいない駅で降りる。

街灯の少なさに懐かしさを感じつつ、僕は踏みしめるようにゆっくりと帰路に付いた。

「・・・ここ、潰れたんだ。中学の頃は盛ってたと思ったんだけどな。」

思い出深い街並みを抜けると、より一層街灯が減る。

家屋も減り、どんどん実家に近づく中、暗闇の中である人を見つけた。



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