第429話 式子さんの怖い話~赤髪の女 後編~
息を切らして居間に入ってきた俺を祖母は怪訝そうに見てきました。
俺は祖母にさっきあった出来事を話すかどうか少しだけ悩みましたが、話すことにしました。
黙って聞いていた祖母は、俺の話しが終わるとすぐに確認した。
「赤髪の女の顔は見たのかい?気づかないフリは出来たんだろうね?ちゃんと家に入る前は傘を閉じて一礼したんだな?」
この時、正直に答えるべきでした。
俺はそのほとんどを守れていなかったのです。
だけど俺は怒られるのが嫌で嘘をついてしまいました。
「大丈夫!ば、婆ちゃんの言う通りにしたから!!」
それを聞いた祖母は心底安心した様子でした。
「けれど万が一ということもある。これを持っていなさい。」
「こ、これは?」
「これは“
そうして渡されたお守りを俺は肌身離さず持って夜を迎えました。
母親たちが寝静まった頃、俺は激しい雨の音で目を覚ましました。
チラッと見た外の様子で、二度寝を決めた時でした。
ベチャ。
そう、聞こえました。
気のせいと思おうとした時です。
ベチャ。ベチャ。
それが足音だと気づきました。そしてその足音は徐々に俺に近づいてきていることもわかりました。
ベチャ。ベチャ。ベチャ。
近づいてくる足音に俺は我慢できず布団を頭からかぶりました。
ベチャ。ベチャ。ベチャ。ベチャ。
遂に足音は布団の真横まで来た時です。
「わたしがみえるよね?」
あの女の声でした。
「ねぇ、わたしがみえるよね?」
俺はお守りを握りしめ、ギュッと目を閉じました。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ!ねぇ!!」
女の声に徐々に怒りの色が現れました。
「わたしがみえている。そうでしょ?ねぇ?ねえったら!!」
俺は絶対に何も答えませんでした。
気が付くと、俺は母親の泣きじゃくる声で目を覚ましました。
そっと顔をのぞかせると、それに気づいた母親は無我夢中で俺を抱きしめました。
泣きじゃくっていて訳が分からず、辺りを見るとゾッとしました。
私の布団の周りには無数の赤い足跡があり、布団にはこれでもかってくらいに真っ赤な手の跡があったのです。
「T。正直に白状しなさい。」
祖母の厳しい言葉に、俺は昨日の本当の出来事を話しました。
それを聞いた祖母は一発だけ俺にビンタをすると、すぐに村のお寺に連れて行ってくれました。
お坊さんは手慣れた様子で俺のお祓いを行ってくれました。
あれ以来、俺が赤髪の女に遭うことはありませんでした。
けれどあの日以来雨の日は苦手です。
「以上だ。どうだったかな?」
「あ、あの・・・。」
「うん?」
「もし、赤髪の女に反応してしまったらどうなっていたんですか?」
「ふむ。言い伝えでは酷いことが起きる。としか聞いてないね。」
「酷いこと?」
「これはあくまで一説だが、赤髪の女は元々名家のお嬢様だったらしいんだ。」
「お嬢様ですか?」
「ああ。だが父親が変わり者で、いわくつきの物を収集するのが趣味だったんだよ。その一つに魅入られてしまった父親は一家を惨殺。自身も喉を斬って亡くなったらしい。その怨念が赤髪の女として今も彷徨っているらしい。だから酷いこともそれに準順じたものかもしれないね。」
「・・・怖いですね。」
「ああ。まったくだ。」
でも個人的には今現代の可愛い八尺様になら会ってみたいと思ってしまうのが男の性であり、赤髪の女も現代版なら・・・と思ってしまう。
「優君?」
「何でもありません。」
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