第439話 高宮君の怖い話~生首温泉 後編~

それからはすぐさま寝ようと思い、用意された夕食を勢いよく腹の中に押し込め、布団の中へと入りました。

女将さんは気にした様子もなく、後片付けをすると、電気を消して部屋から出て行きました。

態度が悪いと思われたかもしれませんが、そんなことよりも早くここの旅館から出たい気持ちの方が強かったのです。

疲れと満腹ということもあり、俺はすぐに夢の中へと入って行きました。


深夜、何時ごろかは覚えていません。

変な夢を見た俺は薄っすらとだけ意識が覚醒したような感覚になったのです。

「・・・へんなゆめ?」

ボーっとする意識の中、何故か視線が吸い寄せられるように神棚の方へ向きました。

「っ!?」

覚醒しきれていない意識でもハッキリとわかるぐらいに、人形の首が増えていたのです。

そしてすべての首が俺を見ていました。


ドンッ。ドンッ。ドンッ。


ゆっくりと重く響く音。

神棚から生首が一つ、また一つと落ち、コロコロと俺に向かってゆっくりと転がってくるのです。

「・・ッ!?・・ッ!?」

声を出そうとしているのに、悲鳴すら出ません。

体も指一つ動かせず、意識だけがハッキリとしてきました。


ケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラ・・・。


俺が逃げ出そうと必死になっている間に、生首全部が俺を囲い、そして一斉に笑い始めたのです。

「うわぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!?!?」

悲鳴をあげながら体を起こすと、カーテンの隙間から日が差していました。

「はぁはぁはぁ。ゆ、ゆめ?」

当たりを見回しましたが、人形の首は一つもありません。

それどころか、綺麗だった旅館は古くなっており、目に見えて寂れているように見えました。

「・・・ど、どういうことだ?」


その後、俺はすぐさま実家に帰り、旅館に着いて母に聞きました。

母は、「何バカなこと言ってんの!あそこの旅館はずいぶん前に潰れたじゃない。」と、頭を叩かれました。

ネットで調べたら確かに潰れていました。

これが俺が体験したおかしな話です。


「以上!どうよ?」

「いや~ね?つまりこの主人公は営業していない温泉に泊まったってこと?」

「まぁ、そうなるな。」

「んじゃ何を食ったんだろうな?温泉もどうやって入ったんだろうな?営業してないんじゃ入れねぇじゃん。」

「そこは幻か何かなんじゃねぇのかな~って。」

「てか、那真玖毘温泉なまくびおんせんって、ありきたりすぎじゃね?」

「僕に言うなよ。僕はネットで見た話をお前に話しただけだっての。」

「ん~何て言うか、面白かったけど腑に落ちねぇ話だよな。」

「・・・僕もそう思います。」

今回はちょっとだけ失敗だったかな?

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