第440話 高橋君の聞いた怖い話~サッカー部の寮 前編~

「よし!高宮ばかりに話させるのもわりぃし、今度は俺が話すぜ!」

「別に話すのは苦じゃないから気にしなくてもいいんだけど?」

「ん?んじゃ聞きたくねぇの?」

「いえ、是非!」

こいつに期待はしていないが、怖い話を聞くのは楽しい。

故に聞かないという選択肢は最初っから無いな!

「だろだろ!ちなみにこの話は俺の中学のサッカー部での話しな。」

「サッカー部の?高橋ってサッカー部だったの?」

「いや知り合いから聞いた話し。」

「・・・で?」

「おう!これはな、サッカー部の小森から聞いた話だ・・・。」


小学校の頃、後悔したことがある。

あれは卒業間近だった。テレビに映ったサッカー選手がキラキラと輝いていて、カッコよく見えたんだ。だからサッカーをやろうとしたんだけど、卒業式やら引っ越しやらでサッカーをする時間が無く、後悔した。

だから中学校の部活ではサッカー部を選択したんです。

けど、今思えばもっと考えればよかったと後悔しています。


中学生になり、部活動紹介でサッカー部の紹介が始まるのを今か今かと楽しみにしていました。

「続いてはサッカー部の紹介です。」

『きた!!』と内心喜んでいたのですが、出てきたのは部長と名乗る人と2,3人の生徒だけでした。

「え~・・・っと、僕らはサッカー部ですが、部員が少なく、試合には出ることが出来ません。また、寮生活が義務で、そこは危険な場所なので自己責任で入部してください。以上です。」

それだけ言い残すと、部員の人達は体育館から出て行きました。

正直、何かの冗談かと思いました。

けれど、動揺しているのは新入生だけで、先輩方は何事も無いように部活動の紹介を続けていました。

少しだけ悩みましたが、僕はサッカー部を選択したんです。


「今日からお世話になります!」

「ああ。」

結局新入部員は僕を含めて8人来ました。ただ、その内5人はいわゆる不良で、ただ単純に親元を離れたかっただけでした。

僕たちは寮内を案内され、部屋も割り振られ、簡単な荷解きを終えると、大広間に集まられました。

「今からこの寮における重要な話をする。」

部長がそう言うと、先輩方から清めの塩を配られました。

「はぁ?んだこれは?」

不良がいらなそうに返そうとしましたが、先輩に無理矢理渡されていました。

「これがお前たちを守ってくれる。質問は個別にのみ受け付ける。最後に俺からお前たちに言う。我慢は絶対にするな。以上だ。」

部長たちはそれだけ言い残すと、すぐに自室に籠ってしまいました。

「んだあれ?おい、どう思うよ?」

「知らねぇよ。てか、なんなのこれは?」

「き、清めのし、塩っぽいね。あ、僕小森です。よろしく。」

「んぁ?あ~・・・まぁ、よろしくな。」

「ギャハハハハ!よろしくってお前、俺たち部活なんて真面目にする気ねぇじゃん!」

「はぁ?んなことはわかってるつーの!俺はこいつと仲良くするだけだ!な?小森!」

「あ、うん。」

「俺は矢板な。こいつは丸山。悪い奴じゃねぇからこいつもよろしくな。」

「しくよろ!」

「う、うん。」

こうして僕の奇妙な寮生活が始まったんです。

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