第32話 式子さんの怖い話~五寸釘後編~

「どうして・・・どうしてよ!。」

家に帰ったAさんの脳裏にはラブラブな二人の光景が焼き付いて消えません。

「なんで・・・何でなのC君・・・。」

自分の方が最初に出会ったのに。

自分の方がC君と仲が良いのに。

自分の方がC君のこと好きなのに。

自分の方がC君に相応しいのに。

自分の方が・・・。

だんだんとAさんの心は壊れ、大好きで仕方がなかったC君を憎み始めました。

何よりも大きく膨らんだものは・・・憎悪でした。

「あの糞女!絶対に殺してやる!」

その日からAさんは不登校になり、部屋の中でBさんの殺害方法を探し続けました。

でもどんなに探してもバレない犯罪などないという結論ばかりで、Aさんの怒りが増幅されるだけでした。

「クソッたれ!!」

その度に部屋を壊し、大きな音を立てては両親に心配させてばかりでした。

「・・・死にたい。」

けれど、あいつらのせいで自分が死ぬのは許せませんでした。

そんなことを考えていると、一通の手紙がAさんの下へ届きました。

その手紙には『呪いの方法』だけが書かれた奇妙なものでした。

「これだったら・・・。」

少しでもいい、Bさんを苦しめる方法が、C君を痛めつける方法があるのなら。

そんな思いでAさんはその『呪いの方法』に手を付けました。

深夜3時、Aさんの家の近くにある神社に行き、一番大きい木に藁人形を置き、一本の釘を喉に打ち付けたのです。

「死ね。死ね。死ね!死ねB!!」

何度も何度もBさんの苦しむ顔を脳裏に浮かべて打ち続けました。

同じようにC君の分の藁人形にも一本の釘をに打ち付けました。

「はぁはぁはぁ・・・はぁ~。」

だんだんと馬鹿らしくなって、AさんはBさんやC君のことがどうでもよくなりました。

ですが、次の日Aさんの目に衝撃的なニュースが入ってきました。

「今朝方、遺体で発見されたのは・・・県に住むBさん(仮)で、死因は喉を刺されたことによる失血死で・・・。」

「うそ・・・。」

信じられないままに学校に行くと、左足を引きづっているC君が目に入ったそうです。


「おしまい。」

「ちょっと最後のって・・・。」

「ああ。どうやら藁人形に打ち付けた場所を負傷していたらしい。」

さらりと式子さんは答える。

「これが式子さんが思う本物の呪いですか?」

「偶然にしては出来た話だろ?それに藁人形を使った五寸釘の話は数多く、古いものでは明治時代の話も聞いたことがあるんだ。」

「め、明治時代・・・。」

「もしかしたらそれよりも古いのもあるかもしれないけどね。それほど歴史のある話なら他の呪いよりかは信頼性があると思わないか?」

だけど、そう言った式子さんの目はどこか寂しそうだった。

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