第31話 式子さんの怖い話~五寸釘中編~

でも、それをよく思わない人物がいたのです。

「邪魔してやる・・・。」

Aさんの幸せそうな顔が気に入らず、何が何でも邪魔しようと思ったBさんはあることを思いついたのです。

「あいつの笑顔をあたしが奪ってやる・・・。」

ある日からAさんが図書室に言ってもC君がいないことが増えていきました。

「昨日はどうしたの?」

「い、いや、先生に呼ばれてね。」

煮え切らない感じではぐらかされてばかりでAさんの心の中には不安がどんどん溜まっていきました。

「今日もいない・・・。」

無人の図書室で来てくれないC君を待ち続ける日々。

次の日何事も無いように振舞い続けるC君。

この繰り返しに耐えきれなくなったAさんはあることを決意しました。

それは同じようにC君が図書室にいない日、Aさんは荷物を隠すように置き、C君を探しに行きました。

校庭から部活動に励む生徒の声を背景に、AさんはC君の行きそうな場所をしらみつぶしに探しました。

「C?いや、職員室には来てないなぁ。」

「そうですか。ありがとうございます先生。」

「Aは部活がないんだから早く帰れよ。」

「はい・・・。」

礼をして職員室を出ると、太陽は沈みかけ、先程までの半分の声しか生徒の声も聞こえません。

生徒の声が少なくなったことで、図書室に帰る途中に聞き覚えのある声が耳に入ってきました。

「この声って・・・。」

嫌な気がするのに、確認せずにいられなかったAさんが教室の中を覗くと、楽しげに話すC君と・・・Bさんがそこにいたのです。

「うそ・・・!」

信じられない光景だった。

自分をイジメているBさんと自分に優しいC君が仲良く話しているのです。

「君はとても賢いね。僕の知らないことがこんなにあるなんて。」

「うふふ。そうでしょ~私は頭がいいの。だって勉強が好きなんだもん!」

「気が合うね。僕も勉強が好きなんだ。」

「ほんと!?私たち相性ピッタリじゃない!」

「そうかな?」

「そうよ!感性が似ているんですもの!間違いないわ!」

伸びていくBさんの手。

「ねぇ・・・。」

「何?」

「この前は私からしたじゃない?急だったけど、結構本気だったのよ?勇気を出したんだから答えをきかせて欲しいな~?」

Aさんにとっては甘えるような気持ちの悪い声。

「・・・そうだね。僕も、君が好きだ。」

けれど、C君には可愛い声に聞こえるようでした。

「ほんと!?嬉しい!!」

「だから・・・。」

そっと触れ合うC君とBさんの唇。

「僕も本気だよ。」

「・・・うん。」

そんな甘ったるい空間がAさんにとっては不快な空間でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る