第97話 麒麟園さんの怖い話~地獄に落ちました後編~

「Aちゃん・・・。」

棺に入ったAはとても穏やかな顔で、どこか笑っているようにも見えました。

「ひっぐ・・・うぅ・・・ひっぐ・・・。」

隣でBちゃんが泣いてくれたから、私は泣かずに済みました。

だって、Aちゃんとは笑って別れたかったから。

だから最後の最後まで泣かないつもりでした。

だけど、次の日の仏壇の前では大泣きしてしまいました。


それからしばらくたった夜、とある夢を見ました。

『ねぇ、ねぇ起きて。』

「う、うみゅ?」

夢の中で目を開けると、そこにはAがいました。

「A?・・・A!?」

『おはよう。』

「おはよう。じゃなくて本当にA!?Aなの!?」

『ごめんね。先に死んじゃって。』

「ほんとだよ!私、私まだAちゃんにいっぱい、いっぱい話したいことがあって!」

『ごめんね。時間があまりないの。だから最後の私のお願いを聞いて。』

「最後って・・・わかった。話を聞くよAちゃん。」

『ありがとう。あのね、写真を撮ったことを覚えてる?』

「あ~あの時のね。そういえばショックがデカすぎて忘れてた。そっか、それを見たかったんだね。」

『違うの!あの写真を見て欲しくないの!』

「どういうこと?」

『もう時間が無い!お願いあの写真は現像しないで!お願いだから写真を、私を見ないで!』

「A!?」

気がつくと、私はベットの上にいました。

「・・・わかったよA。」

不思議なことに夢での出来事は今でも鮮明に覚えています。

だから写真を現像しないようにカメラを捨てました。

「これで、いいんだよね?A。」


それから十年後、私のもとに奇妙な手紙が届きました。

「何これ?」

差し出し人は不明で、真っ黒な手紙。

中の手紙には真っ赤な、血のような文字でこう書かれていました。


『地獄に落ちました。』


そして一枚の写真。

「これって!?」

その写真は確かにあの病室で撮った写真。

私とBちゃんが笑っている写真。

Aは・・・干からびて真っ黒な姿・・・まるでミイラのようでした。


「それからすぐにお寺に預けたまま、その写真がどうなったのかはわからないそうでありマス。」

話し終えると、期待の眼差しを僕に向けてくる。

「とてもゾクゾクしました。Aさんは醜い自分を見て欲しくなかったんですね。」

「そうでありマスね。自分も、醜い姿は見られたくないですし。」

「そうだな。醜い姿を愛することはとても難しい。」

「そうねぇ。胸の無い体は想像したくないわね。」

「・・・おい柑奈。私に喧嘩を売っているのか?」

「あら?自覚がるなら優から離れてあげなさいよ。痛がっているわよ?」

「そこまで胸が無いわけじゃない!そうだろ優君!」

・・・ノーコメントでオナシャス。

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