第96話 麒麟園さんの怖い話~地獄に落ちました中編~
「ごめんね。こんな話聞きたくないと思うけど、Aが話して欲しいって言うから・・・。それに私も貴方には知っていて欲しいの。」
「はい・・・。」
「Aはね、産まれた時から心臓に重い病気を持っていたの。」
「心臓に?」
「そう。お医者様はお薬を飲み続ければ時間が解決してくれるから心配ないっておっしゃてね。だから根気よく頑張ってきたの。それで中学までは順調に回復してたんだけど・・・。」
「だけど?」
「春休みになってからしばらくして容態が急変してね。Aちゃん、入学式だけは貴方と一緒にって。」
「そう、だったんですね。」
聞きたくなかった。
だけど、必ずこういう日は来るものだと覚悟もしていた。
けれど早すぎる!
心の整理も出来ていないのに!
そんな感情を知らずに私の口は聞いていました。
「Aちゃんは・・・良くなりますよね?また、学校に、一緒に!」
「・・・。」
「おばさん!」
「・・・っ・・・ごめんね、ごめんね・・・。」
責めるつもりはなかった。
「私が、あの子を丈夫に産んであげれば・・・。」
言わせたくない言葉を言わせてしまった。
おばさんを慰めることも、かける言葉も私には無くて、ただただ無言でおばさんが泣くのを見るしかなかった。
「おはようA!」
「おはよう。今日も来てくれたんだね。」
「あったりまえじゃん!私たち、親友兼相思相愛を誓った恋人でしょ?」
「もう。うふふ。」
「えへへ。」
おばさんに話を聞いてから私は毎日Aちゃんのもとに通った。
一日でも、一時間でも、一分でも、一秒でも長くAちゃんと一緒にいたかったから。
「今日はさ、友達を紹介しようと思ってね。」
「友達?」
「入ってきて!」
「ど、どうも。」
「こんにちわ。」
「この子はBちゃんね。気が弱いけど、根は優しい子だからね。」
「よろしくねBちゃん。私はA。」
「よ、よろしく。」
「あ!Bちゃんには一言言っておくよ。Aちゃんは私の彼女だから取らないでよ。これでも相思相愛ですから!」
「そうし、そうあい・・・。」
「ちょっと!」
「えへへ~。」
それからは私たち三人で多くの時間を過ごそうと、いろんなことをAにさせてあげようと馬鹿なことをたくさんしました。
病室に様々な料理を持っていったり、中庭で花火をしてAに見せたり、Bちゃんと共にいろんな場所に行って写真を撮ってAに見せたりと。
「・・・写真か。」
「どうしたのAちゃん?」
「私も、三人との思い出に写真を撮りたいなって。」
「撮ろうよAちゃん!三人で!」
「お~いつになくBちゃんが強気だね~。私も撮りたいよA。」
「二人とも・・・ありがとね。」
こうして私たちは看護師さんに頼んで三人の写真を撮りました。
その翌日に、Aはあの世へと旅立ってしまいました。
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