第21話 柑奈の奇妙な話~マヨヒガ後編~

その晩は豪勢な料理が出てきました。

鯛の酒蒸しにマグロの刺身、美味しそうなステーキに山盛りのご飯。

様々な料理が次から次へと大きなテーブルの上に並んでいくのです。

「さぁさぁ旅人よ。遠慮せずにお腹いっぱい食べなされ。」

「い、いいんですか?」

「良いも悪いも旅人の為に用意した馳走だ。存分に味わうがいい。」

「な、なんか申し訳ないですね。あははは。」

「お兄さん!美味しいから一緒に食べよう!」

みっちゃんがステーキにかじり付くのを見てからA君も刺身を口の中に入れる。

「っ!?う、うめぇ!」

今まで食べたことないぐらい美味しい刺身に、A君は夢中で食べ始めました。

「えへへ。すごいでしょ?」

「うめぇよこれ!今まで食ったことねぇよ!」

「ハハハ!どんどん食べなされ。」

迷って良かったっとA君は思ったそうです。

どんどん食べていくうちに、A君は疲れも重なって、食べている途中で眠ってしまいました。

「・・・寝ちゃったね。」

みっちゃんらしくない声を最後に聞いたような気がしたそうです。

翌朝、A君が目を覚ますとテントの中にいました。

「あれ?」

状況が理解できずにテントの外に出ると、そこはA君のいたキャンプ場でした。

「え?あれ?」

どうしてキャンプ場にいるのか理解できませんでしたが、A君はとりあえず家に帰ることにしました。

後日、A君はみっちゃんたちにお礼を言うためにキャンプ場に訪れ、管理人に話を聞きました。

「すみません!ちょっと聞きたいことがあるんですけど。」

「はいはい。何でしょうか?」

「この近くに住んでいる、みっちゃんっていう女の子の家に行きたいんですけど、道が分からなくって・・・。」

「みっちゃん?この近く?う~ん・・・この辺には家はないと思うよ?」

結局、A君はお礼を言うことはありませんでした。


「はたして、あの家は本当にあったのでしょうか・・・。おしまい。どうよ?結構不思議な話だろ?」

「そうですね。何だかこの話って・・・。」

「マヨヒガみたいってか?式子と考えることは同じだな優は。」

「そうなんですか?」

式子さんと同じ思考って言うのは少しだけ嬉しいかもしれない。

「でも、マヨヒガって訪れた奴に富をもたらすんじゃねぇの?従兄の兄ちゃんは今でも貧乏だぞ?」

「そうとも限らないよ柑奈。」

振り返ると、式子さんが立っている。

「マヨヒガは無欲の者が訪れれば富を、欲深い者が訪れれば無を。という話もある。一概に訪れた者に富を授けるわけではないよ。」

「ほ~。ってか式子いつの間に!?」

「さっきだよ。それよりも私はいつの間に優君と仲良くなったのかを聞きたいかな?」

「へ?」

話に夢中で接近していたのに気づいていなかったらしい。

「うぎゃあぁぁ!?」

驚いた拍子に僕は理不尽に殴られた。

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