第231話 式子さんの怖い話~贈られたものは・・・。中編その1~
次の日もまた同じようにCさんは夕方ごろに博物館を訪れた。
「ようこそCさん。」
「あ、あ、あの・・・。」
「こちらへどうぞ。」
その日のCさんはメロンぐらいの大きさの物が入ってそうな箱を布で包んで持ってきました。
応接室に通すと、箱を置き、布を取り払いました。
「・・・え?」
思わず小さな声を漏らしてしまいました。
Cさんが持ってきた箱は何重にもお札が張られていたからです。
「こ、これ・・・。」
Cさんが寄贈したい物はどうやらこの箱の中らしい。
「えっと・・・これは開けても問題は無いんですか?」
「・・・開けて。」
「えっと・・・。」
「開けて。」
明らかに雰囲気の変わるCさん。
ですが、それを気にする余裕もないほどに目の前の箱が異様でした。
「で、では・・・。」
僕は傷つけないように丁寧に開けようとしましたが、お札が厳重でなかなか開きません。
少しでも力を籠めればお札が破れかね無さそうで、慎重に開けようとしたんですが・・・。
「開けて。」
「は、はい。」
「開けて!」
「しょ、少々お待ちください。う、う~ん・・・なかなか難しい・・・。」
「開けて!!」
Cさんの怒鳴り声が応接室に響く。
驚いたBさんに何でもないと言い、僕は決心しました。
「で、ではCさん。このお札を破いてもよろしいですか?このお札が・・・。」
「いい。開けて。」
あっさりと了承したCさんに多少は訝しみましたが、許可を貰ったことで僕はカッターでお札を綺麗に切り、箱を開けました。
「・・・えっと、これは?」
中に入っていたのはかなり汚れているクマのぬいぐるみでした。
「Cさんこれが・・・あれ?」
ほんの一瞬です。
ほんの一瞬Cさんから目を離し、中に入っていたクマのぬいぐるみを見ただけなのにCさんはいなくなっていたのです。
「Cさん?どこですか?Cさーん!」
AさんやBさんにも探してもらいましたが、結局Cさんは見当たりませんでした。
「先生。それ、どうするんですか?」
「う~ん・・・。」
Cさんが置いていったクマのぬいぐるみ。
一応綺麗にはしたが、このクマのぬいぐるみは今でも売っている大量生産品で、珍しさは全くありませんでした。
「うちの博物館に飾ってもいいと思いますけど?」
「そうかもしれないけど・・・何だか不気味じゃない?」
「あ~確かに。お札の貼られた箱の中にあったものですもんね。でも、Cさんでしたっけ?あの人は飾って欲しいって言ってるんですよね?」
「その当の本人でもあるCさんも消えちゃったじゃない。」
「消えたんじゃなくって勝手に帰っちゃったんじゃないんですか?」
「だとしたら貴方が見てるでしょ。受付の仕事をサボっていたわけじゃないんでしょ?」
「サボってませんよ~。」
「と、とにかく!このぬいぐるみは少しだけ考えさせてくれないかな。」
Cさんの願いを聞きたいと思う反面、不気味さの残るこのクマのぬいぐるみを博物館に飾ることへの拒否感が僕に葛藤させました。
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