第230話 式子さんの怖い話~贈られたものは・・・。前編~
「今回話すのは50代男性が体験した話だ。なかなかに不可思議な話だから良く聞くように。」
「はい。」
「はいっす!」
「では、お聞きください・・・。」
この博物館に勤めてもう25年。
サラリーマンをしていた僕に声を掛けて一緒に博物館を経営していた叔父さんはもうこの世にはいない。
流れるように引き継いだ博物館は学芸員2名と共に今も続けている。
「先生!掃除終わりました!」
「ありがとうAさん。今日も一日受付をよろしくね。」
「はい!」
「先生。本日のご予定なんですが・・・。」
「はいはい。」
この日もいつも通りの日常が始まったはずだったんだが・・・。
「え~と、貴方がCさんでよろしいですか?」
「・・・。」
その日はうちの博物館に寄贈したいという連絡があって、その対応をすることになっていた。
夕方ごろに訪れたCさんはずっと黙ったままである。
「う、う~んと・・・。」
「先生。私が対応しましょうか?もしかしたら男性が苦手なのかもしれませんよ。」
「あ~ではBさん、お願いできますか?」
「はい喜んで。」
30分ほど僕が会話をしても何も答えなかった(反応すらなかった)CさんはBさんとの会話には反応を示していた。
やはりBさんの言う通り男性が苦手なだけかもしれない。
そう思っていた時、ふとBさんが微妙な表情でこちらを見てきた。
何かあったのか?そう思って近づくと・・・。
「あの、先生にお話ししたいそうです。」
「僕に?えっと、何か御用ですか?」
「き、寄贈、し、したい物、の、こ、ことなんです、けど・・・。」
おどおどと、話すので精一杯という感じだ。
「はいはい。どのようなお品でしょうか?」
「こ、ここ、に、は、ま、まだ、持って、き、きて、いません。か、確認を、し、し、したくて・・・。」
「確認ですか?それでしたらうちの博物館をご見学されて行きますか?」
「ち、違、い、ます。あ、あな、あなたの、い、意志、を・・・。」
「僕の?どういうことでしょうか?」
「わ、わ、私、が、き、寄贈、し、したいの、は、ふ、ふ、古い、お、玩具、で・・・。」
「玩具、ですか?寄贈して頂けるのであるならば必ず綺麗に修復してから飾らせて頂きますが?」
「お、お、お、おねが、い、します。」
「はい。任せてください。」
「あ、あ、あの、玩具、は、ひ、ひ、人の、め、目が、たくさん、あ、あ、ある方、が、い、いいから・・・。」
よくはわからなかったが、大切なものだからこそ多くの人に見てもらいたいという願いを持って寄贈しに来る人は少なくないのでこの時もそうなのだろうと僕は思ってしまったんだ。
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