第65話 オカルト研究会に相談事~真壁君その2~

「何っすか?」

横山が話しかけると、爺さんはニコって笑ってよぉ。

「君たちは学生さんかな?」

「そうっすけど?」

「いや~ごめんね。ここに学生がいるのが珍しくてね。ほら、ここの公園何もないだろ?」

「まぁ・・・何もないっすね。」

「そうだろそうだろ。だから君たちが気になってね。どうしてここにいるのか、ね。」

「迷惑でしたか?そうでしたら俺たちは場所を移しますけど?」

「いやいや!そんなことはないよ。単なる好奇心だからね。」

「いや~聞いてくださいよ~。実は俺たち水族館に行こうと思ったんすけど・・・。」

横山が爺さんに事の成り行きを大袈裟に話すと、爺さんは声を出して笑ってさ。

何て言うか、不快な感じはしなかったんだ。

「いや~久々に笑ったよ。」

「そんなに面白かったすか?」

「ああ!君は笑いのセンスがあるかもな。」

「マジっすか!?」

「調子に乗るなよ横山。」

「いいじゃんかよ真壁。俺の秘められた可能性かもしれないじゃん!」

「あの、僕たちはそういう理由でここにいたんですけど、おじいさんはどうしてここに?」

「私かい?私は風を感じるために来たんだ。ここは風の通り道だからね。」

「へ~そうなんっすか。」

「ああ。君たちもここに座って感じてみるがいい。」

俺たちは言われるがままに爺さんがどいた椅子に座ったんだよ。

そしたらさ、確かに気持ちのいい風が吹いてさ。

「マジで気持ちいいっすね。」

「そうだろ。私のお気に入りなんだよ。」

「これは本当に気持ちがいいね。」

「だな。ふわぁ~。」

本当に風が気持ちよくって、俺は寝ちゃったんだ。

そんで目を覚ますと夕方でさ。

「やべ!?おい長井!横山!」

「んむにゅ?」

「ふわぁ~。やべぇ寝ちまった。」

「急いで帰ろうか。」

「ああ!・・・あれ?爺さんは?」

「爺さん?」

「ほら、俺たちにここがお気に入りだって教えてくれた爺さん。」

「・・・誰だそれ?」

「・・・は?」

「知ってるか長井?」

「僕も知らないよ。」

二人は爺さんのことを知らなかったんだ。

最初はふざけてるんだって思ったんだけど、本当に知らないみたいで。

「お前さ、夢でも見たんじゃね?」


「そう横山に言われて反論できなかったけど、でも俺は夢に思えなくってさ。俺たちは絶対にあの爺さんと話したんだよ。しっかり何を話したか覚えてるし、何より風が気持ちいいのも覚えてるんだ。」

「けど二人は知らないんだろ?じゃあ夢って考えるのが自然じゃね?なぁ高宮?」

「う~ん。けど、この前の休みのことをここまで正確に覚えてるのをみると、あながち夢じゃない気もするんだけど?」

「じゃあ何で二人は知らないんだよ?」

そうだよなぁ。

真壁君だけが覚えていて横山君と長井君が覚えていない。

どちらが正しくてどちらが嘘をついているのか。

それともどちらも真実か。

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