第111話 学校の怪談~その8~

「じゃあ四つ目。四つ目は『笑う体育館』。」

笑う?どういう意味だ?

「笑うって・・・体育館が?ギャハハハって?それが俺たちの体育館なんっすか?」

「う~んギャハハハかどうかはわからないけど、笑ったらしいよ。それも結構最近ね。」

「最近、ですか?」

「うん。これは私たちが入学する五年くらい前のことなんだけど・・・。」


「今日からここが私の頑張る場所だ!」

体育教師を目指していた私は地元の学校の教育実習を終え、新たな場所での教育実習が始まろうとしていたのです。

「今日からこのクラスで副担任になりました大森夏子おおもりなつこって言います。教科は体育です!元気だけが取り柄ですが、皆さんと仲良くなれるように頑張りますのでよろしくお願いします!」

掴みは最高で、すぐさま学生のみんなと仲良くなれました。

皆優しくて元気で可愛い生徒たち。

だから私も全力答えました。

「みんな頑張って!」

その日は体力テストでした。

みんな一生懸命走っている姿が眩しくて、つい応援に力が入ってしまったのを覚えています。

「よーし!そこまで!みんな、よく頑張ったね!さぁ、今日体育はお終い!さぁ征服に着替えてね。」

皆がぞろぞろと帰る中、一人の女子学生が怯えた表情で立っていたんです。

「どうしたの?」

「せ、先生。あのね、声が聞こえたの。」

「声?」

もしかして誰かがこの子の悪口を言っているのか、そう思いました。

もしそうだったら私の力で何かできないかなどと考えました。

けれど、その子は私の想像していないこと言ったのです。

「笑い声。シャトルラン宙に用具室から笑い声が聞こえたの。けどね、誰もいなかったの。」

「誰も?どういうこと?」

「クラスのみんなは体育館にいたから用具室に誰かがいるなんて無いと思うの。だけど、笑い声は聞こえた。本当だよ!」

先程の怯えた様子もあり、この子が嘘をついているとは全く思いませんでした。

「わかった。先生が調べてみるね。ありがとう。勇気を出してくれて。さぁ!早く着替えておいで。」

「うん・・・。」

しかし、私の心の何処かがあの子の話をまともに聞いていなかったのです。

「う~ん。やはり誰もいないよね。」

一応、用具室を確認しましたがやはり誰もいません。

「きっと空耳ね。」

それ以降も体育が終われば用具室を確認していましたがやはり声は聞こえません。

ましてや笑い声なんて。

「先生。」

「うん?何?」

「やっぱりあの時の笑い声は私の気のせいだったのかな?」

「・・・どうして?」

「だって・・・あの日以外笑い声は聞こえないから。」

やっぱり空耳だったんだろう。

この時の私はこの子がそれでいいならそれでいいのだろうと、思っていたのです。


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