第153話 式子さんの怖い話~旅館の求人中編その1~

私はすぐに電話しました。


「はいお電話ありがとうございます!ご予約でしょうか?」

「あ、すみません。求人広告を見たんですけど、まだ募集していますでしょうか?」

「あ。少々お待ち下さい。」

「お願いだから開いててよ。」

電話に出た受けつけだと思う人は若そうな女性の方でした。

電話の向こう側で低い声の男性、おそらくは 宿の主人だと思います。

その人と小声で会話をしていました。

私は心臓が飛び出そうなほどに緊張しながら待ってました。

やがて受話器をにぎる気配がしました。

「あの!」

「・・・ザ・・・ザ・・・ザザ・・・い・・・そう・・・だ・・・。」

「え?」

「はい。お電話変わりました。えと短期バイトの件でのお電話でよろしいでしょうか?」

「え?あ、はい。インターネットに載っている求人で知りまして、是非働かせてほしいのですが・・・。」

「あー、ありがとうございます。丁度、バイトさんが止めたばかりですので、こちらこそお願いしたいです。いつから来て頂けます?」

「私はいつでも構いません。」

「じゃ、明々後日しあさっての木曜日からでお願いします。すみませんお名前を伺っても?」

「はい、Aっていいます。」

「Aさんだね。木曜日の、そうだな11時に旅館に来てください。お待ちしております。」

とんとん拍子で私は運が良かった。

念のために私は電話の用件などを録音するようにしてたので、再度電話を再生しながら必要事項をメモしました。

住みこみなので持っていく物のなかに 保険証なども必要とのことだったのでそれもメモします。

少し気になったので宿のことを調べると、白黒での宿の写真が出てきました。

こじんまりとしているが自然にかこまれた良さそうな場所で、期待が高まりました。

私はバイトが決まる安心感からお腹がより減り、買ってきたコンビニの弁当を勢いよく食べました。

「でも、あんなページあったかな?」

何か引っかかるような気がしましたが、良条件なバイトを今更やめるという選択肢も無く、私は準備を始めた。


次の日、私は酷い頭痛にで目を覚ました。

「いったぁ・・・。」

酒は飲んでいないはずなのに。っとそんなことを考えながら着替える。

軽い朝食を済ませ、歯を磨くと歯茎から血が滴った。

「うっそ・・・。」

鏡で顔を見ると、ギョッとしました。

目のしたにはくっきりと墨で書いたようなクマが出来ており、顔色は真っ白。

まるで病人のよう・・・。

「ううぅ・・・。」

バイトやめようかとも思いましたが、すでに準備はできていたし、何より旅行に行きたかった。

しかし気がのらないのも事実。

そんな葛藤している間に時間は流れ、木曜日になり、電話が鳴り響きました。

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