第51話 式子さんの怖い話~笑う女の子前編~

今日は久々に式子さんの怖い話が聞ける。

そう思うだけで朝から気分が上がり、そして今、待ち遠しかった部室に到着する。

「こんにちわ!・・・え?」

元気よく入って見ると、そこには式子さんしかいない。

「来たね優君。」

呼んでいた本を置き、手招きで僕を呼ぶ。

「あの~式子さん、他の方々はどうしたんですか?」

「ん?ああ、柑奈は家の用事。星夜は学校の手伝い。尾口先生は気まぐれでここに来るからわからないな。」

「そうなんですね~。」

「なんだ?私とでは物足りないのかい?」

「いえいえ!そんなことはないですよ!ただ気になっただけですから。それよりも早く聞かせてください!」

「ふふっキラキラと、良い目だね優君。良かろう、話そうじゃないか。」

式子さんは軽く深呼吸をすると、ゆっくりと口を開いた。


A君は両親と仲が悪く、よく喧嘩けんかしては家を飛び出していました。

そして決まって橋の下に行くのです。

「糞ジジイがッ!うぜぇんだよ!」

その日もA君は父親に注意されたのが気に入らず、反抗し、喧嘩になって家を飛び出してきていました。

「はぁ~あ。こんな糞みてぇな場所からいなくなりてぇな。」

そう言って石ころを川に投げるA君。

いつもは数回石ころを投げれば家に帰るのですが、その日は違いました。

何故か、視線を感じたのです。

「・・・気のせいか?」

一応辺りを見回しましたが、誰もいません。

「気持ちわりぃ・・・帰ろ。」

A君は足早に帰りました。

次の日も同じように父親と喧嘩をし、橋の下に来たA君。

「糞がッ!何で俺ばっかりに怒るんだよ糞ジジイ!アニキだって成績悪いだろうが!」

むしゃくしゃしたA君は石を拾っては何度も川に投げ続けました。

すると、また視線を感じたのです。

「ああぁ?」

イライラしていたせいなのか、その視線が不快に感じました。

「誰だ!俺のこと面白おかしく見てんのは!気持ちわりぃから止めろ!!」

怒鳴りつけても虚しく響くだけのA君の声。

余計に腹が立ったA君は近くにあった看板を蹴り飛ばして、その日は帰りました。

そしてその次の日も、懲りずに父親と喧嘩して家を飛び出したA君。

いつものように橋の下に行き、悪態をつく。

「糞が!!いい加減にしろよ糞ジジイ!俺に構うんじゃねぇーよ!」

それから石ころを拾い、川に投げつける。

そしてまた感じる不快な視線。

変わることの無い同じことの繰り返し。

「いい加減にしろ!!何で俺を見てんだよ!理由を言え!姿を見せろ!糞ったれが!!」

頭に血が上り、石ころを川に投げつけずに石柱に投げつけようとした時、A君の手が止まりました。


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