第377話 百物語合宿~お題:化け物 後編~

「な、何笑ってんですか。」

「笑えるさ。僕は成功したんだよ?これは革命的さ。」

「何の話しですか?意味が分かりません。」

「“エント”は僕が生み出したのさ。」

「・・・は?」

先輩の話している言葉が頭に入ってきませんでした。

それほど衝撃的だったんです。

「エントなんて妖怪も幽霊も、もちろん都市伝説もいない。エントは僕が生み出した想像の化け物さ。それが今はどうだい?この学校の話題の中心さ!全く・・・面白くて笑いが止まらないよ。」

「う、生み出した?先輩が?」

「ああ。」

「な、何の為に?」

「もちろん、理由はない。ただ何となく・・・ね。」

「じゃ、じゃあ!何であいつは学校を休んでるんですか!」

「産まれたからに決まってるじゃないか。エントはこの世に生まれたんだ。これからはみんながエントを見ることになる。」

先輩の言う通りでした。

俺が卒業するまでに、エントを見たという話やエントに襲われたという話を数多く耳にしたんです。

「ここにもいるのさ。エントは。」

「は、はぁ?何言ってんですか?エントは儀式を・・・。」


『お~い。』


先輩の声に反応するように、年老いた声が聞こえたんです。


『お~い。・・・お~い。・・・お~い。・・・お~い。・・・』


聞き間違いかと思いたかったけど、何度も呼んでいるような声が聞こえるんです。

「君のこと呼んでいるよ?応えてあげないのかい?」

応えてはいけない。

それぐらいわかりました。


『お~い。・・・お~い。・・・お~い。・・・』


意識すると、背後から息遣いのようなものも感じました。

「ああ。僕の想像通りの姿だ。とっても醜い。」

先輩にはエントの姿が見えているようでした。


『お~い。・・・お~い。・・・』


『お~い。・・・』


肩に、手が乗ったんだと思います。

あの時は無我夢中で走って逃げたので、何が起きたのかよくは覚えていません。

あの後、俺はエントについての話を全て耳に入れないようにしていましたから。

今でもあの中学校で噂になっているのかどうかはわかりません。

どうでもいい補足ですが、友人は次の日には何事も無かったように登校してきました。


「どうでありマス?この不思議な話し?」

何だこの話は?

妖怪?幽霊?都市伝説?

そんなことよりも生み出したって・・・え?

「訳が分からないわよ!」

「自分もそうでありマシた。この話を聞かせてくれた友人も、よくはわからないそうでありマス。」

「式子さん。これってどういうことなんですか?」

「わからないことが恐怖の話しなのだろう。」

「え?」

「聞けば聞くほど、デタラメのようにも感じられるが、それが恐怖ともとれる。本当に、怖い話というのは奥が深い。」

なんか綺麗にまとめられたけども!

スッキリしない話だな!もう!!

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