第378話 百物語合宿~お題:駅 前編~

「あぐっんぐっ。」

午前中の怖い話を終え、僕たちは予定通りバーベキューを楽しむことにした。

驚いたのは、千夏さんが用意した材料だ。


「ふへへ。両親が皆さんによろしくと、いっぱい用意してくれたでありマス。」

「だ、だからって・・・。」

「ふむ。良い肉だな。」

いやいやいや!?

お肉の名前が“松坂牛”と書かれてるんですけど!?

高そうなお肉の名前なんですけど!?

それもこんなにたくさん!?

「これでバーベキューって・・・本当ならいくらよ。」

「それは考えないほうが良い。違う恐怖を味わうことになるぞ。」

「ですね。あれぐらいがちょうどいいんでしょうね。」

貴方のことですよ、尾口先生。

何の疑問も持たずに焼肉とお酒を楽しまないでよ。


というやり取りを経て、今はバーベキューを楽しんでいる。

「しかし、驚いたわよ。午前中で残りの話全部終わっちゃうんだもん。これなら午後に行けるんじゃない?心霊スポット。」

「そうだな。午後に行こう。その方が安全性も高いだろう。」

心霊スポットに行くのに、安全性を気にするんだなぁ。

ま、安全の方がいいけど。

「それにしても優殿のあの話、自分はとても怖かったでありマス。」

「どれだい?」

「駅がお題の奴じゃない?でしょ千夏。」

「そうでありマス!」

「ああ。あれですか・・・。」


皆さんは“きさらぎ駅”の都市伝説を知っていますか?

簡単に説明すると、女性が電車に乗っていると、とある駅で止まった。

その駅は“きさらぎ駅”と書かれているが、周りには誰もおらず、時計も見当たらない。

聞いたことの無い駅に、女性は掲示板で情報を求めた。

女性の書いた内容を面白おかしく思った多くの人が調べると、なんと“きさらぎ駅”という駅は日本地図に載っていなかったのです。

次第に注目が集まり、誰かが女性の反応を期待して話しかけた。

女性は最初こそ実況していたが、途中で反応が途絶える。

怖く思った人が、女性を助けようとあの手この手でどうにかしようとしたが、どうにもならず、結局女性の反応待ちだった。

その後、女性は“きさらぎ駅”から抜け出せたことを掲示板に報告。

安全が確認されて、人々を安堵させた。

そんなとこだ。

これをのちに知った俺は、その駅を探そうと、ほとんど手掛かりの無い中で探したんです。

とりあえず無人駅を周りに回って。

「ここもハズレだな。」

何十もの無人駅を回った俺は、かなり疲弊していました。

けど、どうしても“きさらぎ駅”をこの目で見たくて、あの時は頑張っていたんです。


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