第379話 百物語合宿~お題:駅 中編~
「よぉ。今日も疲れた顔してんな。バイト疲れか?」
「それもあるけど、どっちかというと趣味の方がな。」
「趣味って・・・まさか!?お前まだ探してんのか!?きさらぎ駅を!?」
「ああ。」
「うっそだろ!あんなん都市伝説じゃん!」
「だから何だよ。俺はこの目で見たいんだよ。その為にバイトもやってんだから。」
「そうかもしれねぇけどさ。いい加減にやめたらいいのに。もう全国回ってんじゃねぇの?」
「まだそこまでは。無人駅って意外と多いんだよ。」
「ふ~ん。ま、興味ねぇけど。あ!」
「どうした?」
「思い出したんだけどよ。昨日合コンで聞いたんだよ。」
「何をだよ。」
「幽霊が出る駅があるんだってさ。」
「幽霊?」
「ああ。何でも女性の霊がでるんだとよ。たしか・・・。」
この時の友人の話を俺は適当に聞き流していましたが、無人駅を歩き回り続けるうちに、何かしらの成果が欲しいと思ってしまったんです。
「・・・行ってみるか。」
思ったが吉日。
俺は土曜日になると、すぐにその駅に向かったのです。
「幽霊が出るって噂だけど・・・本当か?」
昼間にその駅を訪れてみると、活気にあふれていて、とても幽霊が出るなんて噂があるようには思えませんでした。
しばらくその駅を見ていても、幽霊が出るようには思えません。
「ガセか?でも・・・よし!」
帰ろうかとも思いましたが、俺は一応夜まで聞き込みをすることにしたんです。
「え?幽霊が出る?聞いたことないけどな~。」
「幽霊が出るぅ?何を馬鹿なことを。」
「は?幽霊?君ねぇ、もういい年した大人でしょ?」
「幽霊の噂なんて聞いたことないです。」
聞く人聞く人全員が誰も幽霊が出るという噂を知らないんです。
だから本当にガセなんじゃないかと思っていたんです。
ところが・・・。
「幽霊の噂、ですか?」
「ええ。知りませんかね?」
「・・・知っていますよ。」
「え!?」
たまたま時間つぶしで寄ったカフェのマスターが噂話を知っていたんです。
「確か一昨年ぐらいだったと思いますよ。貴方と同じように心霊スポットの噂を聞きつけて訪れた人でした。その人が深夜にあの駅で見たそうなんです。」
「み、見た?」
「ええ。首の無い女性を。そしてその女性に襲われそうになったと、翌朝私に泣きついてきましたよ。今でも覚えていますよ。」
マスターが嘘をついているとも思えず、この噂が本当なんだと思いました。
「で、でも変じゃないですか?それじゃあ何で他の人は・・・。」
「わざわざ私が広めるようなことでも無いですし、他の方は興味がないのではないですか。」
それ以上は何も聞けず、俺は深夜まで待つことにしたんです。
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