第303話 高宮君の怖い話~遺品整理業者後編~

「いや、本当にありがとうな。」

「本当っすよ。ま、社長に何かあったら俺たち無職っすからね。」

「はぁ~。本当は行きたくないですよ社長。ですから!ボーナスはお願いしますよ。」

「わかってるよ。」

一人で行く勇気の無かった私は、頭を下げてAさんとB君についてきてもらいました。

例の家に着くと、余計なことはせず、一目散にあの部屋に行き、急いで遺品整理をしました。

ですが結局、この部屋にも思い出の品になるようなものはありませんでした。

「これで最後っすけど・・・これただの空き缶っすね。」

「中には何もないの?」

「無いっす。見ましたから。」

「ん~変な家だなぁ。写真が一枚も無いなんて。」

「そんな人もいますって。」

「でもこれで終わりですよね?社長。」

「だな。これ以上は探す場所もないし、終わりだな。」

長かった遺品整理を終え、私たちはこの家を後にしました。

廃棄処分の物やお焚き上げも済み、あとは依頼主に連絡するだけでした。

「・・・つながらないなぁ。」

「まだつながらないんですか?」

「ああ。」

「どうしてですかね?」

「さぁな。」

「社長、郵便っす。」

「郵便?」

B君が持ってきた白い封筒には消印も、宛名も書いてありませんでした。

不思議に思いましたが、迷うことなく封を切って中を見ると、写真と共に一枚のメモ紙が出てきました。

写真には若い夫婦と幼い子供が写っており、メモ紙には・・・。

「え・・・。」


『おじさん、わすれもの』


そう、書いてありました。

後日、ようやく連絡の取れた依頼主に話を聞いてみると、あの家は依頼主の娘夫婦の家だったそうです。

娘夫婦の子供が亡くなってすぐに離婚し、別々になってしまったために依頼したそうです。

最後になりますが、あのメモ紙に書いてあった文字、あれは子供の手書きのようでした。


「以上です。」

ふぅ~。何とか中城さんの誘惑(抱き着き)に勝ったぞ。

「ふふん。どうようちの優は。」

「いやなんで創が威張ってんだよ?」

ごもっともです。

「何ていうか、それってマジもんの話しなの?」

「はい、そうですが。」

「うっわ!マジであるんだね。そういうこと。」

「そうですね。この世には説明のできない不可思議な現象は必ずありますからね。」

「いや~優君がこんな話するなんて思わなかったよ。ね、玲央れお。」

「お、終わった?本当に終わったの?」

中城さん・・・そろそろ放して?我慢の限界なんだけど?

「相変わらず優はそういうのがまだ好きなのか?」

「はい。相も変わらずで恐縮ですが。」

「・・・気に入った。」

はいぃ?

「優、ライン教えて。」

「あ、妃登美ずるい!うちにも教えて優君。」

「わ、私も・・・。」

「いいですよ?」

「あ!じゃあ俺のも・・・。」

「お前のはいらない金髪眼鏡ヤンキー。」

「おふぅ。」

こうして、僕のラインに3人の新たな友人が増えました。

創兄さん・・・すまん!

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