第302話 高宮君の怖い話~遺品整理業者中編その2~
「なんか、やけに不気味だなぁ。」
一人での作業は、恐怖が煽られてより一層、家の中が嫌な空気で満ちていました。
私はようやく掃除を終え、遺品整理に移りました。
こんなことはあまり言いたくは無いのですが、あまり思い出の品になりそうなものはありませんでした。
食器や衣類はもちろんのこと、腐った食材など捨てるものばかり。
写真や記念品といったものは一つも見当たりませんでした。
「ん~このままじゃすべて廃棄だな。」
遺品整理がしやすいのはいいのですが、これでは清掃業者と変わりません。
何かないかと、家の中を整理しながら隈なく探しました。
「見当たらない。やっぱりあの部屋の中なのか?」
足跡のあった部屋を除いてすべての部屋を確認しましたが、結局思い出の品は何も見つからず、私はどうするか悩みました。
「あの部屋に入るのは・・・嫌だなぁ。」
悩んだ末に、私は朝の明るいうちに作業をすることにしました。
「じゃあそういうことだから今日はこの辺で・・・あれ?」
家を出ようと居間の前を通った時、私は違和感を覚えました。
無視しようとも思いましたが、気になってしまい、私は居間の中に入りました。
「何かさっきと違うような・・・あ、あれ?これって・・・。」
居間のテーブルの上。
そこに、一枚のメモ紙が置いてあったのです。
『おじさん、だぁれ?』
メモ紙には、そう書いてあったのです。
「い、イタズラか?あ、悪趣味だな!まったく!」
イタズラな訳はありません。
この家に誰かが入ってくれば気づくはずですし、こんなメモ紙は先程の整理中には絶対になかったのです。
私はメモ紙をゴミ箱に捨て、早々に家を出ました。
翌日、私はあの家に行きませんでした。
「やっぱいるんっすよ!幽霊!」
「そんなことは・・・あるのかなぁ。」
「絶対にそうですよ!私たちはあの日以来、あの家に行ってませんし。」
「そうっすよ!だいたいイタズラって言っても誰が社長にするんすか?」
「だよなぁ。」
「それもそうだし、社長をおじさんって知ってるのも気味が悪いですよ!」
「だなぁ・・・。」
「社長、もういいんじゃないっすか?ここまでやったんすからもういいっしょ。あちらさんには思い出になるような品は無かったって言えばいいんすよ。元々遺品はいらないって話ですし。」
「だけど・・・あとあの部屋だけなんだよ。」
「それが問題なんです!だいたい依頼した人には連絡が取れたんですか社長。」
「いやそれがまだで・・・。」
あの日以来、何度も連絡しても依頼主にはつながりませんでした。
けれど、私はこの仕事を続けたんです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます